「飲みに行くわよ」


乱菊さんのその一言がよくなかった。
例の任務は私のたてた作戦どおりに進み、その上不測の事態にも対応することができた私はMVPと言われた。そしたらもちろん調子にのった。テンションが急上昇し、報告書もろくに書かないまま、乱菊さんと他数名と飲みにいってしまった、わけだ。


「………で」
「申し訳ありませんでした」


あああ執務室の冷たい床で正座してる今を、昨晩の馬鹿騒ぎしている自分に見せてやりたい。日番谷隊長が「で」というまでの間にどれだけおでこを床にすりつけたかも見せてやりたい。ついでにちょっと決まってる今朝の私の髪型も見せてやりたい。


「ひ、日番谷隊長」
「……」


目で話すのはやめてくださいませんか。まじ怖いんです沈黙とかほんとうに怖すぎるんですあああああ。
またも床にごりごりおでこをすりつけていると、日番谷隊長の大きなため息が聞こえた。私のチキンハートが大地震だ。ものすごいビートを刻んでやがる。おそるおそる顔をあげると、日番谷隊長が手を出していらした。


「………(がしっ」
「誰が握れっつった誰が!」
「え」
「報告書。書けてんだろーな」


日番谷隊長に言われて、あわてて報告書を取り出す。ほんとうなら乱菊さんが書くべきなんだろうけど、それは気にしない。乱菊さんには仕事がない。いや、あるなしの次元じゃないんだ。あろうとなかろうと、乱菊さんは仕事をしない!彼女の信念のもとにそうなっているに違いない。
話がそれた。少ししわくちゃな報告書をぴんとひっぱって、両手で捧げ持つようにして差し出した。


「報告書でございます」
「しわくちゃじゃねーか」
「今の土下座でそうなりました」
「後で書き直しな」
「…はい」


飲みすぎた頭でくらくらしながら書いた報告書だから、もしかしたら怒られるかもしれない。でも朝早くに起きて、きもちわるいながらに必死に書いた報告書でもある。…いや、褒めるとこなくね私。自業自得…いやいやいや。ポジティブに行かなきゃ!
気合いを入れ直して、日番谷隊長の目が動くのをこれでもかとガン見してみる。右、左、右、左、右左右左右左右左右左。あ、ちょっと酔いそ。


「まだ酔いさめてねえのか」
「っや、あの」
「松本に連れまわされたんだろ。悪いな」


びっくりした。突如声をかけられてかなりびびる私をよそに、隊長ははあとため息をついた。まさか、今のが見られていたと…?つまり日番谷隊長には三個目の目があると…?あっいまのダジャレじゃないです。じゃなかった、いま全ての責任が乱菊さんに向こうとしている!


「違います私が飲めもしないのに勝手に浴びるように飲んだんです!!」


ばんと隊長の机に手をついて私はそう叫んでいた。ばかじゃね。なんで一時のテンションに身を任せるんだ私。何度でも言おう。ばかじゃね。





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