「辞表?」


日番谷隊長が呟くと、隣で乱菊さんが笑い出した。おそるおそる頭をあげると、隊長は私を呆れたように見ている。乱菊さんは笑いながらもそうそうにソファに座って、茶菓子を口に放り込んでいる。


「名前、何を勘違いしてるか知らないけど、あんたに仕事がないのはクビにしたいからじゃないのよ」
「え」
「現にほら、見なさい」


ぺらりと渡された紙を見るとそこには虚討伐の任務があった。私の得意分野だ。そしてそこには、名字名前と私の名前がかかれている。
びっくりしながらもそれを読んでいると、日番谷隊長が「名字」と私の名字を呼んだ。反射的に背筋を伸ばしてはい、と返事をする。我ながらとてもいい返事だ。


「お前は事務仕事はからっきしらしいが、人望もあるし、それなりに腕が立って、作戦も立てられるらしいじゃねえか」
「え、」
「だからそこを見込んだまでだ。得意なところをやりゃあいい。もともと死神は虚退治がメインの仕事だ、事務くらいどうとでもなる」
「ひ、日番谷隊長…」
「ま、十席以上になりてえんなら事務もできるようになるこった」


日番谷隊長ははあとため息を一つついて、乱菊さんからお茶をうけとった。隊長は、隊士一人一人を見てくださっていたのだ。私は居眠り常習犯だけれど、討伐任務はいつだってがんばっていた。できるだけ前線に出て、時には作戦を提示したり、この足りない頭なりにがんばっていたのだ。事務ができない分、一生懸命働いていた。
じわりとにじんだ涙をごしごし袖で拭っていると、乱菊さんがぽんぽんと私の肩を叩いてお茶を渡してくれた。床で正座したまま、一口飲む。それから勢いよく頭をもう一度床にたたきつけた。


「ありがとうございます!!!!!」
「わっ、痛そ」
「わたし、わたしがんばります!日番谷隊長、私がんばります!!」
「ああ」
「ただ私は十席で十分なので、事務仕事はやっぱり遠慮したいです!」


おでこがじんじん痛い。だけど顔は何故か笑顔になってしまうから不思議だ。日番谷隊長は、やはりすばらしい隊長だ。この人の下で、私は一生懸命働こうかっこ虚討伐任務に限る。ゆっちゃん、もしかしたらこれからも私の分の事務仕事がまわるかもしれないけどよろしくお願いします!腐れ縁だと思って諦めてね!


「驚くほど向上心ねえなお前」


日番谷隊長はひくりと口元とこめかみを痙攣させたけれど、どこかすこしうれしそうに見えた。のは、気のせいじゃないと思いたい。





101119

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