「おはようございます!」
席官室の入口にて頭を下げる。角度はうつくしき45度。完璧だな、そう思って顔を上げて私は驚愕した。なんと。時間より15分早くきたのに、ほとんどの席がうまってるじゃないか。ごくり。さすが…席官は心構えから違うのか。
「もしかして名字十席ですか?」
「あ、はい名字名前ですおはようございます!」
ぺこりと頭を下げると目の前の人がにっこり笑って私の席を教えてくれた。確かこの人は、ええと、第六席の方だ!大慌てでもう一度頭を下げる。今までほとんど会話したことない方ばかりだ。ほんと、なんで急に第十席なんかになれたんだろう。不思議で仕方ない。
私の席はまだ何もない。でもこれから書類が積みあがるに違いないのだ。風呂敷から筆とすずりを出す。ああ、一体いくつ書類が来るんだろう。書類整理はほんとうに苦手で、だめだめで、ゆっちゃんにどれだけ助けてもらっていたか。はっ、まさかあの仕事を私がやっていたと勘違いされたのでは…!?違いますあれは私じゃなくてゆっちゃんが
「おはよう」
背筋がぴんと伸びた。顔をあげると日番谷隊長。すると他の席官の方はもうすでにそろっていらっしゃって、次々に頭をさげた。ああだから皆さん朝が早いのか。隊長が、早いから。
むずむずするような感じがして、私も頭をさげて挨拶をした。隊長はすぐに執務室に消えてしまったけれど、皆さんに気合いが入ったのはさすがの空気読めない私もわかる。がんばろう。がんばろう!周りの席官の方たちはさっそく仕事にとりかかっていた。私もとりかかろうとしたけど、書類が、ない。
「あのう、私の仕事…」
隣の方にこっそり話し掛けると、この方もにっこり笑ってくれた。第十一席、私の一つ下の方らしいのだ。しかし情けなくも私の方が明らかに仕事ができなさそうに見える。いや、できないと断言しよう。
「名字十席には、仕事はあまりまわさないようにと言われていまして」
「…え?」
私の存在意義、いずこ。
101119