「なんだその顔」


なんだって、だから、もともとなんですってば。何回言ったらわかるんですかたいちょう。もちろんいつにもまして変な顔してる自信はあるけど、かりにも私は恋する乙女。夢みる女の子なわけだし。


「隊長が、じらす、から」
「あー…それは悪かった」
「どれだけ待ったと思ってるんですか。まあ最近まであんまり気にしてませんでした、けど」
「俺はちゃんと考えてた。その点俺のがマシじゃねえか」


鼻の奥がつんとするから、あわててそこに力をこめる。解決法としては間違ってるだろうけど、これしか思いつかないから仕方ない。隊長が私のこと考えてるって、それだけで私はもうどれだけしあわせなことか。このまま帰っていいですか。いややっぱり返事は気になるけど、でもこのしあわせだけで私はおなかいっぱいというか。「名字」ていうか私目おかしくなったのかもしれない。それとも頭?わかんないけど、だって。
日番谷隊長の私よりちいさいはずの体が、なんだかずっとおおきくみえるよ。


「確かにお前は手のかかる部下で、だから心配だっていうのもある。だけど、それよりも」
「まっ!ま、待ってください隊長こっここ心の準備がまだ、」
「うるせえ、がたがた言うなばか」


どうしようどうしよう今になってこんなに緊張するとか、わたっ私の人生でもTOP3に入るくらいな緊張なわけで、あっ私の人生もう終わってるやじゃあ何、死んでから?もうわかんないわかんないわかんないけど、日番谷隊長の目は、なぜかこんなちっぽけな私をまっすぐとらえてくれてい、る。


「なあ、好きだ」


…シンプルで飾りっけなんてこれっぽっちもないくせに、好きだって何が?って言ってやりたいのに、私はたった一言しか言えなかった。しかも即答。しかも内容最悪。


「うそだ」
「…いや、うそついてどうすんだ」
「だって隊長が私なんか好きになってもなにもいいことないし、」
「俺を好きになって何かメリットがあったのか?」
「ないです、だって隊長は上司だしモテるしいちいちどきどきするしヘマ増えたし」
「デメリットだらけじゃねえかよ。なら別に俺がお前を好きになってもいいだろ。ばかでどうしようもなくても」
「たっ隊長ひどいです何もそこまで…!し、しかもさっき私のした質問シカトしたし!」
「そりゃかっこつけて言おうとしてること先に言われたらそうするしかねえだろうが」
「それでもひどいです!ていうかすごいはずかしくて、なんかもう、あーもう!隊長よくはずかしくないですね!」
「俺だって恥ずかしいがそんだけお前に恥ずかしがられるとなんかもう恥ずかしくなくなってきた」
「ずっずる!隊長ひどいしずるいです!」
「いやずるいってお前」


口からひょいひょいでてくる言葉はもちろん本気じゃなくて、でも隊長は見透かしてるのかあきれたように右から左に流している。こんなにうれしいのに、なんであまのじゃく発動してんの。答え:私があほだから。だけど隊長は、なんでか知らないけどそんな私が好きらしい。はずかしい、顔が全焼しそうなくらいあつくって、涙が出そうだ。ああもうすきです大好きなんです、たいちょう。





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