私の異動は正式に決まって、十番隊のみんなに広まった。私の話がうわさになるなんて、なんだか誇らしいんだか照れくさいんだかわかんないじゃんか。あんなにいやだった異動も、なんとか受け入れられそうだ。全部、日番谷隊長のおかげ。


「あんたがいいならいいんじゃない?」
「そうですね。浮竹隊長もいい人ですし。とりあえずその甘納豆から手を引いてください隊長のですよあげませんからね」
「つめたーいー」
「だめです!隊長のかわいい顔をおがめる貴重なアイテムなんですから!!」


甘納豆をさっと隠す私を、ジト目でみる乱菊さん。ま、負けない権力なんかに屈しない!この甘納豆は私がこの間の非番の日に、わざわざ隊長に教えてもらった店まで行って買ったもの。それをいくら乱菊さんといえど、タダで渡すわけにはいかねえなあ。いやお金もらっても無理ですけど。次買いに行く時に買ってきてあげるとかならいいですけど!
ちゃくちゃくとお茶の準備をする私を、乱菊さんはほおづえをついて見ている。…ヒマなのかな。隊長、乱菊さんここにいますよ!今なら簡単につかまえられますよ!!


「かわいいねえ」
「えっ」
「ふーん」
「な、…照れます」
「違うわよおばか。隊長のことかわいいだなんて、あんたもほんと変わってる」
「…そうですか?」


いやだって甘納豆をたべる日番谷隊長はほんとにかわいいし。べつに私がアブノーマルなわけではないと思う。うん。お茶筒からぱらぱらとお茶葉を急須におとす。……よし、このくらい。最近手つきがプロい気がするぞ。でも私は日番谷隊長がちょっぴりでも喜んでくれれば、石川さんみたいにプロで賞金王目指さなくてもアマチュアでがんばれる。まあ自分で言ってて意味わかんないけど。


「隙ありっ!!」
「あ、乱菊さんだめですよこら!それは日番谷隊長の!」
「ねー」
「なんですか!」
「日番谷隊長に返事もらったの?」


どばっとお茶筒から大量のお茶葉が急須に吸い込まれていく。ちょっうわっこれ苦いどころのレベルじゃないぞ!どうしようちゃんと渇いてなかったから急須にはりついてるし、お茶筒に戻せないし!かくなる上は青汁と言い張って…いやいやいやそれにはレベルが足りない気も。「帰ってきなさーい現実逃避禁止ー」いやいや見えない、ひらひら手をふる乱菊さんなんか私には見えない。…いや、まあ。逃げたってしょうがないんだけどさ。


「まあ、…まだです」


そう。あれからそれなりに時間はたったのに、隊長からは一切その話がない。大量のお茶葉に、どばどばお湯をいれて自分の湯のみに。「えっあんたそれ!」ぐびっと男らしく飲む。…苦いよりも何よりも、熱くて舌がぴりぴりした。





101207

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