「あ、ごめんその噂流したのあたしかも」


ホワイ?あ間違えたホワット?乱菊さんに噂のことを相談したら、まさかの返答。流したの、乱菊さんってこと?
完全にかたまった私。「安心してー、隊長の耳には入ってないから」あ、はい。乱菊さんはおいしそうにお茶をすすって、マイペースに雑誌をめくり始めた。乱菊さん仕事は?っていうのは愚問なので何もいわない。


「ど、どういうことでしょう」
「いやね、五番隊の副隊長の雛森桃っているじゃない。あのこ隊長の幼なじみなんだけど、隊長の話で盛り上がっちゃって!」
「どっどうしてあんな噂に!」
「隊長が彼女つくるなら誰か話してたらさ、いつのまにか名前の話題になってー。それを誰かが聞いて勘違いしたんじゃないかしら」
「なっ」


これが犯人は必ず現場に戻るってやつか…!はい違いますごめんなさい。いやだってあまりにも身近なところすぎる上、本人のせいじゃないとかどうしたらいいのかさっぱりっていうか。ていうかその、やっぱり勘違いだったわけか…うん。やっぱり隊長とつりあって見えるなんてありえないよなあ、あほの名字なんて呼ばれてる私が。…ぐすん。


「まあまあ、噂に惑わされず気長にがんばりなさい。応援するし」
「は、はい…あれ?」
「なによ」
「がんばる?応援?なっなにをでしょうか乱菊さん」
「なにをって。好きなんでしょ?隊長」
「うげほっごほっがは!!!!!」」


ここどこかわかってますか乱菊さん。執務室なんですよ隊長がいつ帰ってくるかわからないんですよ!?なんて言えるほど冷静ではなく、私はただ声にならぬ叫びで乱菊さんの袖をひっぱった。「顔!顔なんとかしなさいやばいってそれ!!」ごめんなさい。
すぐに大人しくなった私の頭をぐしゃぐしゃ、となでまわす乱菊さん。なぜか耳の後ろもわさわさされる。いやいや私犬じゃないっす。


「で?どーなの」
「…わ、わかんないです」
「なんで」
「え」
「なにがわかんないのよ」
「いや…ええと」


そ う き た か !
なにがとは新しい。最近あんまり寝れてない頭は妙にさえていて、ぐるぐると回転しだした。なにが。なんで私は日番谷隊長が好きかわからないんだろう。日番谷隊長。我らが憧れの隊長。

確かにずっと憧れだった。私は院生時代ずうっと居眠りと赤点ばっかりで、先生に怒られてばっかりで、ゆっちゃんに頼りっぱなしで。実戦だけはまずまず、斬魄刀を手に入れるのもそんなに手こずらなかったから、お前にはほんと頭が足りないなあなんてみんなに言われてたっけ。ゆっちゃん、いっつも怒ってくれてたなあ。私、私はへらへらしてたよ、なあ。
日番谷隊長は、私とは真逆だった。らしい。いつも真面目で、優等生。うらやましいなんて思わないくらい純粋に憧れてた。すごいなあ、すごいなあって。それで十番隊を希望して、私なりに隊長のお役にたてるようにがんばったのだ。だけどやっぱり事務は苦手で居眠りばっかりで、でも任務だけはほんとにがんばった。怪我する人を少しでも押さえられるように、いろんな作戦を考えた。だけどみんなは相変わらず私をみてばかだなあって笑う。私もへらへらしてた。だけど、だけど隊長は。

乱菊さんはうんうん唸る私を見ながら、またずずっとお茶を啜った。それから頬杖をついて、にっこり笑う。


「あんま難しく考えなくていいのよ。隊長は、あなたにとって何?」


私にとって。ええと、なんだろう。言葉にするのはすごくむずかしい。ばかだから、ボキャブラリーがないから。だけど隊長はそんな私を認めて、がんばるチャンスをくれた。そうだ。


「かっ……革命児?」
「…それ、言い方なんとかならないの?かわいくない」
「だ、だって」
「いい加減腹くくりなさい!」

「……………すっ好き、です」





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