この間山田に聞いた噂は、どうやらほんとうにぱらぱらと流れているらしい。ゆっちゃんに聞いたらそう言ってた。まずいってこれ。いやだって日番谷隊長は写真集が一瞬で売り切れちゃうくらい人気者で、私はあほの名字と言われている(ゆっちゃん情報)ような子だ。そんな釣り合うわけないし、いやでも隊長と恋仲とか…えへへ。うん、いいなあ。隊長かっこいーし。きびしいけどやさしーし。ふふ、ふ。


「墨汁たれてるわよー」
「っわぎゃあああ!!まじだ!ティッシュ!ティッシュ!!!」
「ムリムリ。墨はティッシュじゃ落ちませーん。いい加減学習しなさい」
「ら、らら乱菊さん!!」


乱菊さんは熱そうなお茶をずず、とまったり啜っていた。い、いつの間に。さすが副隊長といったところか…ていうか乱菊さんはなんでそこにいるんだろう。そこは七席の場所じゃ…まあ気にしたら負けだな。
私は大人しく新しい紙を出して、十番隊から六番隊への任務引き継ぎに必要な書類を再び書き始めた。これはすっごく大事な書類で、しっかり書かないと日番谷隊長の足をひっぱってしまうのだ。…のわりには考えごととかしてたな私。ばか、おばか。いつまでたっても成長しないのね!でも仕方ない、すごく大切なことを考えてたんだ。あの噂をどうするか…あれ。いつの間にか妄想に変わってなかったか。…し、知らない!


「しあわせそーな顔してたからどうしたのかなーって」
「えっ」
「ほらっ話しなさい!」
「やっこれはなんというかあの、ひっ、日番谷隊長にちょっとお話があるんだった失礼します!!!」


がったんと机から立ち上がった瞬間にすずりが揺れて、中から墨汁が零れる。わっ木の机だからしみになる!咄嗟にさっきの書き損じの紙で押さえると、上からがっしり手首を掴まれた。しまった。一応そろりそろりと顔をあげて手の持ち主をみると、やっぱりというか乱菊さんで。そーっと手を引こうとしても、乱菊さんの手はちっともゆるまらない。


「逃がさないわよ?」
「ったすけてええええ乱菊さんがあああああ」
「あっばかそんな大声出したら隊長きちゃうじゃない!!!」
「残念、もうきてる」


聞き慣れた声がしたのと、目の前の乱菊さんの首根っこが掴まれたのはほぼ同時だった。なんて早業…!さっきまでいなかったのに、なんでこんなに神出鬼没なんだろうこの方たち。すごすぎてスーパービデオの映像がほしい。あっあと解説も。
じゃなかった。いつもより怒ってらっしゃる風な日番谷隊長は、ひくりと口元を痙攣させる。乱菊さんがしまったという顔で、でもちゃっかりお茶菓子を一つ口にほうり込んだ。


「あーあ、名前のせいでつかまっちゃったじゃないの」
「お前が仕事サボってんのが悪いんだろうが。名字、邪魔したな…ってまた墨汁零してんのか」


そそっかしいんだよお前は。そう言って呆れたようにため息をつくと、隊長は乱菊さんを引きずって執務室に消えてしまった。またって、ひどくないですかたいちょう。私だってがんばってるのになあ。私だって、私…どどどうしよう。ひ、日番谷隊長みたらなんだか心臓が、心臓らへんが変なんですが。ちょっ、ちょっとどうしたんだ私。
これは、どゆこと?





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