「山田っ!」
「わっ、ちょっ」


久しぶりにみた友達に飛びつくと、ものの見事にべちゃんとつぶれた。私がおでぶとかなのではなくて、山田がやわっこいのである。昔っからそんな感じの山田は、心やさしい男の子。ゆっちゃんとは正反対である。
山田をわしゃわしゃと撫でていると、横っ腹に痛み。やば、絶対開いたこれ絶対開いた。誰かひらけゴマとかしたんじゃないかってくらい開いた。犯人は誰だ!許さん!っていたたたギブギブ。あーこれさっき治療してもらったばっかなのに。


「や、山田傷ひらいた…」
「また!?もう…いちいち飛びついてくるからですよ…」
「人をサルのように!」
「そんなこといってないじゃないですか。ほら、治してあげますから」


困ったように目尻を下げる山田がかわいくて仕方ないのは黙っておく。なかなか賢い私。それはそうと、私の横っ腹の傷は深くないけど浅くもないらしく、さっき治療担当してくださったのは卯ノ花隊長だったとか言った方がいいのかな。いや言わない方がいいな。わかんないけど。とりあえず卯ノ花隊長に傷ひらいたのがバレたら私はやばいだろう。本能がメガフォン使って叫んでる。
大人しく傷口を出すと、山田は真剣に治療を始めてくれた。わ、まつげ長いなうらやましいな。山田は治療もうまいし、だから七席…


「あ!」
「わっ」
「私まだ山田におめでとうって言われてないよ!山田!」
「え、お、おめでとう?」
「そうそう」


私がぐいっと顔を寄せると、真剣に考え始める山田。かわいい。そう、私はまだ山田に十席就任おめでとうと言われていないのである。ふっふっふ、せいぜい悩むがいいさ。でも手がとまってる、まったく山田はしょうがない子だなあ。私なんか任務はばりばり、事務もなんとなくこなしているというのにな。なんとなく。…はっ、最近また私報告書しか書いてない!仕事!!事務仕事は!?まさかまたゆっちゃん…ああ怒られる…。


「あっもしかして」
「お。思い出した?」
「日番谷隊長と付き合っ」
「違ああああああああああ!?」


咄嗟に隊長ばりのツッコミができた。早くてキレのある華麗なツッコミ。やはり人間やらなくてはならない窮地においやられたら何でもできるらしい。私でもできた。多少息切れしてるのは初心者だから許してほしいわけだが、そうじゃなくて。


「そうなんですか?皆さんが噂してるからてっきり…あ。もしかして照れ隠しじゃ」
「違う違う違う!それは醤油とアルミホイルくらい違う!!」
「そうなんですか…あ。でも両方とも台所にありま」
「いやいやいや片方食べれるけど片方食べれないし!!!まったく違うわって痛い痛い痛あああ!!」
「あ、ほら暴れるからまた傷が…!」
「いったああああ傷口開いたああああ」

「名字十席、何を騒いでらっしゃるんですか?」


…ええと、四番隊の治療は二種類あるらしい。一つは痛くないものと、もう一つはちょっと乱暴なものと。一つ目は効かなかったようなので二つ目にしましょうね、と笑う卯ノ花隊長はまじ怖かったです。おでこの皮がすりきれるほど土下座をしたのはさすがに初めてでした。





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