エマージェンシーエマージェンシー。緊急事態です。事態は深刻、早急な措置を求めます。
仕事がありません。

…ええと、今日は席官の皆さんがよく出払う日だった。数少ない仕事のお茶をいれることすらする必要がなくなってできなくなった私は、それこそぼうっとイスに座っていることしかできなくなってしまった。しかもそれすら、書類を届けにきたゆっちゃんにあほづらと言われてたしまったのである。なんということだ!
そこで私は、第十一席の方の机から、そうっと事務の仕事を抜き取ってみた。人間にはやらねばならない時がある。今がそうにちがいない。いわゆるラスボス戦的なもの。そう意気込んで墨汁ではなくわざわざ墨を摩るところから始め、こう若干前のめりになるくらいの勢いで書類にかじりついたというのに。


「…名字」
「………はっ!!!」


ばっちり寝てしまうあたりが私です。
書類に取り組みはじめたのは確かお昼過ぎで、今窓から見える景色はきれいな夕暮れである。…寝たのか、私よ。いやまだ自力で起きたならいい。席官の皆さんに起こされたなら笑ってもらえただろう。だがしかし、ふふん。そこは私クオリティ。


「ひ、日番谷隊長…」
「お前なあ…相変わらず居眠りしてんのか」
「いっいえ今日はなんていうかその、特別だったんです!ほんとうです最近ほんとに居眠りなんてしてなくて!!!」
「ふーん?」
「こっ」
「こ?」
「小指切り落としましょうかなんなら…!」
「いやいらねーよ」


日番谷隊長はぺしりと私の頭を叩いて、それから開けっ放しだった窓を閉めてくださった。そういえばちょっと寒いかもしれない。くしゅ、とくしゃみをすると隊長はため息を一つ。


「せめて居眠りは窓閉めてからにしとけ、風邪ひくぞ」
「いやだから不可抗力で…あ、隊長いくつかお渡ししたい書類が」
「あ?」
「こっこれです!」


今日やった分をすばやくまとめてとんとんと角を揃える。完ぺきだな。居眠りしたのはまずかったけど、私にしてはかなりがんばってある量だった。正直自分でも今見てちょっと驚いている。アンビリーバボー。だけど、隊長は書類を受け取ってから、喉の奥で小さく笑ったみたいだった。


「…ほぉ」
「は、はい?」
「ちゃんと働いてんじゃねえか」


日番谷隊長はさっき叩いたところを、今度はぽんぽんとなでてくださった。な…なんてことだ。隊長はそれからすぐに部屋から出ていってしまったので、私は存分ににやけることができた。たまには仕事がないのも悪くないねエトソン君!あっワトソン君だっけ…?





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