早起きをした。
家の荷物はきれいにかたづけをして、家具以外は一つにまとめた。案外少なかった。洋服は処理に困ったから、そのままボックスにいれてある。一応これもきれいにたたみ直していると、ふと視界に飛び込んできたワンピース。かわいくて買ってから、結局なんだか自分には合わない気がして着れなかったもの。新品のままなんてもったいないし着ようかと思ったけど、結局着ないでボックスの一番上に戻した。
外に出て、その空気の冷たさに頭がすっきりした気がした。はだしの足に草がからむ。つめたい。つま先から染み込んでくる。河川敷の、朝だ。

草のところを選びながら、さくさく歩いていく。リクルートさんには悪いけど、彼の家のある橋のすぐ下、あそこから飛び降りようと思う。さっき飲んだ睡眠薬がきいてきたのか、頭がどこかぼんやりしている。起きたばっかりなのに、また眠いなんておかしいなあ。私寝起きはいい方だし。
飛び石のところを歩いて、リクさんの家の真下に向かう。石はかたくて冷たくて、草の上を歩く方がずっとよかった。歩き慣れていたからだろうか。足にやわらかくからみつく感じが、急に恋しくなった。ざらり、としたコンクリートが少しだけいたい気もする。そんなの今さらだなあ。今から私は、しぬのに。はしごを一段一段たぐりよせるようにあがった。金属のはしごはやっぱり、つめたい。上に、上に上に上に。つちふまずにはしごがめりこむ。なんだか変な感じがした。あれ、なんかおかしい。さっきまでと違う気がする。ふわ、とした感じ。おかしいな、私はただはしごを昇っているだけで。ねむい。ふわふわして、変。ああ。


今、どうしようもなく。

彼の歌がききたい、なんて。















目が覚めた時。
私はいつもと変わらぬベッドの上にいて、いつもと変わらぬ朝だった。全部夢だったのかと思った。だけど、体に違和感を感じて視線を天井から下げた時、私は絶対に着なかったあのワンピースを着ていて、黄色い、星の頭が見えた。


「な、んで」


喉から出たのは、ほそくふるえた声だった。





110323

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