「ナマエー」


星がきれいだった夜、つまり月が隠れてしまった夜。空気は、昼間に比べたら冷たい。街頭の明かりに負けないよう、きらきら光る星は生き物みたいだった。燃え尽きるその瞬間まで輝こうとするなんて、私にはきっとできない。
そんな風にぼんやり夜空を見上げていたら、星に呼ばれた。ニノと会うためには早く起きなきゃいけねえからな、と早寝しているはずなのに。


「なんでいるの?」
「ん。いや寝る前にお前が家から外出たの見たんだけどよ、帰ってくの見なかったからどうかしたのかと」
「別に気にしなくていいのに。夜風にあたろうと思っただけだし」
「にしては長くね?トイレかと」


はあ!?と声を荒げると星はげらげら笑った。それでようやくからかわれたと気づいてどつくと、星はいてぇなとまた笑う。今日の星は変だ。なんか変。
私がぺたりと草の上に座ると、星もすぐ横にそうやって並んだ。なんで。声には出せない疑問が、心の中でぐるぐるまわる。だって、星が私のところにくるなんてフツウじゃありえないし。星はニノが好きだから、ニノの近くにいるはずなのに。


「…なんで」
「そればっかだなお前はよォ」
「いや、だって星、ニノのとこいかなくていいの?」
「いや寝てるし」
「だから明日に備えて、」
「別にいーんだよ、あのヒモ野郎はニノに何かできるほど根性ねェってわかったからな」


星は大きく伸びをして、ごろんと後ろに転がった。心臓がはねる。星とこんな風に二人っきりになるなんて初めてで、どうしたらいいかわからなくて。星のほうを見ると、星はただまっすぐ上を見ていた。さっきまで私が見ていた空を、じっと。


「ニノが好きだ」
「…いや知ってるって」
「すげえめっちゃ超好きなんだぜ。ほんっとに。ニノの為ならなんでもできる」
「………うん」
「だけどまァ、お前も大事な仲間だしな」


星は私のほうを見て、にっと笑った。それからすぐに手が伸びてきてわしゃわしゃと頭を撫で回される。子供扱いみたいで逃げようかと思ったけど、星の手の重みがきもちよくてなんとなく逃げそびれた。


「なんでもは無理だけどよ、俺にできることはさせてくれよな」


星の声は、私たちの上に輝くやつと同じように私にやさしく降り注ぐ。ばかやろう。また好きになっちゃうじゃんかよ。これ以上好きになんてなりたくないのに、嫌いになりたいのに。うれしく思う反対で、仲間と言われた痛みがある。好きになりたくなかったと、後悔する私がいる。夜の風は、やはり少し冷たい。





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