悪いことじゃない。
P子が村長を好きなのだって、ラストサムライがP子を好きなのだって、シスターがマリアを好きなのだって、星がニノを好きなのだって。
悪いことじゃないけど、つらくないのかなあとは思う。またいつもみたいに下流を目指して歩きながら、そんなことを考えた。足に草がまとわりつく。でも、どこかとおい世界のことのよう。


「…あー」


少し上流、みんながいる辺りからギターの音が聞こえてきている。きっと、というか完全に星だと思う。いいなあ、でも今、なんてとおい。私はあれ以来、星をこれまで以上に避けてばかりだった。あんなに聞きたかったのに、私は意地をはってこんなところにきてしまった。泣きたかった。でも泣けない私。いつからか、こんながんこ者になってしまったんだ。
胸いっぱいに空気を吸い込む。つらい。あんな風に笑っていることは、私にはできない。星のためにと、諦めることもできない。できないだらけのちっぽけな私、いったいどこにいくんだろ。


「ナマエ」
「…マリア」
「新入り君に挨拶しないの?リク君、なかなかいい子よ」
「マリア」
「……なに」
「わたし、星のところにいきたいよ」


マリアの前なのに、私はぽたりと涙を落としてしまった。今は隠そうと思わない。悪いとも思うけど、このつらさを私はどうしたらいいのか。このまま抱えて、いつか暗い闇にのまれてしまいそうで。そして、星のあたたかさに触れられなくなるのが、いちばん怖い。「今日はやけに素直なのね」マリアがくすりと笑った。私はただ、そんなマリアを見つめる。


「いけばいいのに」
「いけない」
「なぜ?」
「いけない」
「…最近のナマエは、自分から距離をとっているように見えるわ」
「だって…!」
「ニノちゃんを避けたって星君を避けたって、アナタは何もできないのよ」


向き合いなさい。マリアの言葉に、私はへらりと笑ってみせた。涙は止まっていた。私、マリアみたいに強くないよ。だってできることならこの気持ちがなかったら、って何回思ったかわからないんだ。





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