おしゃれをするようになって、ドジをふまないようにがんばるようになって。今すごく女の子らしい私。充実してるんじゃないかなあ、と前の席の男子のつむじをみながらそう思った。友達ちょっと増えたし、おかげで勉強するようになったし。部活のお手伝いも積極的になった。それに何より。基山と、少し距離ができた。





「マネージャーになるのはだめ?」


秋が眉をさげて、私をじっと見る。いや…ねえ?私なんかよりなりたい人いっぱいいるだろうし、なったらなったで大変そうだ。ただでさえ今、少しちょっかい出されてるっていうのに。「なおさらじゃない!」秋はさらに声をあげて、私の手を握ってぶんぶん振った。あ、ちぎれるってば。


「前はたまにだからよかったけど、最近毎日きてくれるでしょう?それなのにマネージャーじゃないなんて、何いわれるかわからないよ?」
「あはは、気にしないからいいよ」
「気にしないって…そういうの嫌なんじゃないの?私は名前ちゃんに嫌な思いしてほしくない」


確かに、嫌だけど。でも仕方ないのかなあと思えるようになったから、そんなに心配はいらない。それに、今の私は基山と喋ったりはないから、あのたくさんいる女の子は秋のいうほど私に興味はないと思う。数人、ちらりといるだけだし。だから大丈夫、ごめんねありがとうと笑って秋から視線を外した。
フィールドを見ると、ちょうど基山が蹴るところだった。ボールに向かって走り出す姿を最後までは見ないで、ベンチにドリンクを並べる。最近基山は、私と無理に関わろうとしない。からかってばっかくる奴がいなくなってせいせいした!と思えるはずなのに、なにか100%そうは思えなくて、それがまた私を混乱させる。無視は私も奴もしてない。けど、なんだか避けられているような気が、して。


「名前!」
「あ、緑川君。ドリンク?」
「もだけど、タオル!」


ぴょこん、とはねる黄緑色のポニーテール。うっすら滲んだ汗がおでこに見えて、タオルを手にとるとおでこの汗だけ拭いてあげた。ありがとう、と笑う緑川君はかわいくて、私もつられて笑った。周りの視線は痛いけど、このくらいいいじゃんか。パーマをかけた髪が視界の端で揺れる。あと少ししたらかけ直さないといけないなあ、なんて考えた。


「じゃあ練習戻るね!」
「うん、がんばれー!」


手を振って見送ると、その先に基山が見えた。たぶん、目があった。基山のあの、綺麗で深いエメラルドが見える。緑川君のポニーテールは変わらず揺れている。右に、左に、規則正しく。私の髪も、風でふわりと舞い上がる。基山はそのまま、ふいと横を向いてフィールドに戻った。





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