布団を引きずり出して、その中に小さくなってくるまる。
まだ鼓膜がじとりとあの音を忘れさせてくれなくて、鞄の中からミュージックプレイヤーを出して耳に押し込んだ。テンションを上げたかったのにかかってきたのは何故かクラシックで、余計に暗くなる。気まぐれでいれておいた自分をちょっとうらんだ。


「何が私のせいだよ」


そう、ぽつんとつぶやく。私は何も基山にしてないじゃんか。基山は私にたくさんちょっかいを出すし、時々傷つくようなこともいうけど、私は何もしてない。むしろできるだけ関わらないように生きてるつもりだ。
こんなことを言ったらみんなに怒られそうだが、私は正直基山が苦手だ。だから私から関わるなんてするはずないし、つまり私が基山と関わる時はいつだって基山が無理に絡んでくる時で。つまりあいつは理不尽で、理不尽なおおばかやろうなんだ。
その時、さんかくずわりをしていた足と体の間に、ふと目がいった。秋ちゃんや春奈ちゃんや、どの女の子と比べてもたいてい小さい胸。へいたんな胸。胸も色気もないと奴に言われたのを思い出して、またなんだか気持ちが落ち込んだ。なんで基山のせいでこんな気持ちにならなくちゃいけないんだ。なんで基山に。


「……むかつく」


今までは怒らなかったけど、今日は別だ。体調不良を私のせいにするなんて最低。私だって落ち込んでたのに、それを責めるなんてほんっと最低!基山なんかもう知らない。喋りたくない。私にだって、反抗する権利も力もあるんだ。
布団の中からはい出ると、リュックの中からお財布を取り出した。それから簡単に着替えて、覚悟を決める。大丈夫だ。校則違反じゃないし、似合わないってことはないだろう。


「お母さん、お金ちょうだい!私パーマかけてくる!!!」


キッチンにいるお母さんにそう宣言する。お母さんはびっくりしたのか、ぱちぱちと瞬きをして私を頭のてっぺんからつま先まで見てきた。「…急にどうしたの」「いいから!」手を出すと、お母さんはちょっと待ってねとお財布を取りに行った。
私はその間にお財布の中身を見る。大丈夫、まだたくさんある。グロスを買って、あと美容液も。それからかわいいポーチを買うんだ。女の子らしいシュシュも買おう。うんとかわいくなって、基山なんて見返してやる。ドジももうしない。勉強だってする。基山がからかうとこのないくらい、カンペキな女の子になってやるんだから!





110113

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