「名前、今日も来てくれたんだ!」


にこ、と笑う緑川君はもはや天使だ。
一学年下なだけでこのかわいさ、純粋さ。それはおいといて、緑川君だけじゃない、一年の子、また同学年にもまあそれなりに好かれている私は、サッカー部によく顔を出す。頼まれたらサッカー部マネージャー手伝いを引き受けるくらいに私は皆が好きで、力になりたいと思う。
だってサッカーをしてる皆はすごく輝いて見えて、このベンチから見るのがすごくすごく楽しいから!
まあ、一つ問題があるには、あるけど。


「名前ちゃん」
「わ、基山!」
「また来てくれたんだ?」
「そんなのいいから集中しなさい」
「うん、俺のこと見ててね」
「…ほんとに私の話聞いてないよね!」


緑川君の後ろから顔を覗かせて、基山はにっこり笑った。びっくりしたらしい緑川君は文句を言い、それに基山がごめんごめんと謝る。緑川君はそのまま基山と二、三言交わしてストレッチをしに言った。わああ行かないで!と願ってもムダ。この場に残った基山と、目が合う。
そう、こいつが問題。完全におもちゃにされている。今のもどうせ確信犯なのはわかりきってるし、私は曖昧に笑いながら基山から離れようとした。ドリンク作り手伝わなきゃだし、仕事をしないとただベンチでサッカー部を見学しようとしてる迷惑な奴になる。ていうかそれ以前にここはファン多いから、やるべきことやらずにいたら私は殺られる。恋する乙女はオソロシイ!
まあもちろんそういうわけで作業にかかろうとしたけど、基山がそう簡単に私を逃してくれることなんてない。
秋のところに行こうとすると、ぱしりと手首をつかまれた。「…きーやーまー?」基山はすぐに私の手を放し、スパイクの紐を結び出した。あれ、私どうすればいいの?基山はもくもくと紐を結んでいる。「名前ちゃん、」ようやく基山が私を呼んだ。


「あのさ、ちゃんと聞いてるよ」
「へ、何を?」
「…忘れるの早すぎ」


基山は私を見上げてぱしんと膝を叩いてきた。それから立ち上がると、ストレッチを手伝うように言われる。「ねえ基山、聞いてるってもしかして私の話のこと?」座って足を開いた基山の背中を、リズミカルに力を込めて押す。ちょっと緊張しながら聞いたのに、基山は「さあね」といって笑った。何それ。やっぱり私、遊ばれてるなあ。





100812


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