ありがとう、名前ちゃん。

にこりと笑う少年は、ドリンクを渡した私の手の上にがっちりと自分の手を重ねている。ありがたいなら早く飲め。まず喉を潤すことを優先してください。


「秋、助けて」
「ええ、私?」
「そうだよ手伝ってるのは秋に言われたからなんだから!早く!」
「でも基山君にドリンクを渡したのは名前じゃ、」
「私だって別の人に渡そうとしたけど無理矢理上から手捕まれたの!!」


ぎゃあぎゃあ喚く私とにこにこ笑う基山、困り顔の秋。誰か助けてくれ。
そもそも私はただ単に好意で手伝いにきただけなのに、なんでこんな目に会うんだろう。基山くんかあ、かっこいいかもと思っていたかつての自分を殴りたい。いやまあ見た目はかっこいいけどごにょごにょ。
とにかく、私は一刻も早くこいつから解放されたいのである。ていうかいつまで握ってる気なの。もし基山ファンに見られたら、確実に殺られる。
基山は相変わらずにこにこと嬉しそうに笑っている。「もういいから、わかった、このドリンクは私が基山の為に用意したものです!」「ほんとに?嬉しいな、ありがとう」「だから早く飲んで欲しいんだけど」ぐい、基山にむかってドリンクを押す。基山はわ、と小さく声を漏らしたものの、結局微動だにしなかった。


「よし基山。単刀直入に言うよ、放して」
「やだ」
「も、放せってば!」


基山にむかってドリンクをぐいぐい押す。瞬間、ゆるんでいたらしいフタが開いて、中からぴゅっとドリンクが飛び出した。それは基山と、私の顔に何滴かずつ飛来した。うう、ツイてない。
「基山のせいで飛んだ」「ごめんね、責任はとるよ」「結構です」「なんで?」「嫌な予感しかしないから!」基山は不満そうに口を尖らした。ようやく彼は私の手の上からどき、ドリンクを抜き去った。ごくりごくり。汗の光る色白な喉が上下する。CMか何かにありそうな感じだ。そんな爽やかイケメン風にドリンクを飲んだ基山は、それを私に放った。キャッチ。あ、またなんかちょっとドリンクが出てきた。


「基山また飛んだ!」
「だから、俺が責任とろうか?って」
「結構です!!」
「ふうん」


あーあ、せっかく舐めとってあげようと思ったのに。
基山がその台詞を言い終わるか言い終わらないかのうちに、その頭に向かって自分でも驚くべき速度でドリンクを投げつけていた。がん、鈍い音がする。見事に命中したそれに少しよろけたあと、基山はくすくすと笑っていた。なんだあいつ、Mなのか。基山、恐ろしい子…!





100809

基山がまた飛んだ!
って打っちゃってちょっと笑った


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