「お、今日早いんだな」


家を出ると、お向かいの風丸さんちのドアもちょうど開いた。出てきたのは、またちょっとだけ背が伸びたであろういちくん。


「なにかあるのか?」
「や、あの、運動会が近くて、朝走ろうかなって」
「運動会?」
「わたしいっつもリレーの選手になれないし、でも、一等とりたくて」


だって毎年いちくん一等だったから。リレーの選手だったから。走り方教えてもらったりしたのに、私はリレーの選手にも一等にも一度もなれてない。
今年で卒業で、来年はいちくんのいる中学に入る。絶対だ。だっていちくんのいない通学路は、ほんとうにつまらなくて。でも、中学に入る前に、どうしたっていちくんと同じところに立ちたい。わたしの意地みたいなもの。


「そうか、がんばれ」
「う、うん!」
「朝かー。よし、俺もつきあう」
「…え?」
「今日はちょっと無理だけど、明日からまたこの時間な!」


そう言ってにこりと笑ったいちくんは、私の頭をぐしゃぐしゃに撫でてから走っていってしまった。
…ずるい。
わたしも一緒にいきたい。なんで同い年じゃないんだろうって、こんな妹みたいな扱いやだよ。好きなの、いちくんが。
でも明日から毎日会えるのかなって思うとうれしくなる。運動会がんばろう。少し秋めいた空気を吸い込んで、走り出す。早くあなたのとなりに並べる春がきますようにって、そっとった。




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