「なんでつけてんの」
薬指を指摘すると、こまったように笑われた。
彼氏との不仲はとっくに知っている。こいつも、俺が結婚しそこねていることを知っている。俺の薬指にあるはずの指輪はとうにポケットなのに、こいつはいまだにつけたりしている。
「いちおう、彼氏にもらいましたから」
「好きじゃないくせに」
「嫌いじゃないもの」
そうやって目を伏せて指輪を撫でる、その仕種がどうにも好きになれない。
好きか嫌いかでいえば好きで、恋をしたかといえばノーで、でも惹かれているかといえば、イエスだと思う。
俺の居場所に近いのはここである気がして、でもわからない。
「なに拗ねてるの?」
そうやって笑うとことか、本当にすごいと素直に思う。