また震える携帯。
でも出る気はなくて、電源を切ってポケットへ。ごめん。
全国チェーンの喫茶店に入って、適当に注文をした。がらがらで、お席までお持ちします、と言われたから適当に座る。あーあ。


「お待たせしました」


店員の声がして、顔をあげる。バイトだろうか、若い女。思いっきり目があって、妙な気まずさから逸らす。


「ごゆっくりどうぞ」


だけど女はいやな顔一つしないでにっこり笑うと、一礼をしてカウンターの奥へ消えた。
…居場所ができた。
電源を切った携帯のせいでジェームズにも連絡ができず、かといってアンに連絡する勇気もなくて、さまよっていた俺に。臆病者に。後ろめたさで身動きが取れない自分に、ここはいてもいいんだって。
結局コーヒー一杯で閉店まで、ずっと一人で座っていた。でも退屈ではなかった。これが俺と、あいつが出会ったときのこと。





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