ついに買った、指輪。
婚約指輪代わりのペアリング。でも並んだイニシャルを見ても、なんか変な感じがする。ジェームズに言ったら、変な顔をされた。「僕はうれしくてマンション中の人に見せたよ!」それはお前だけだ。
「アン、」
呟いてみても、何も響かない。違和感。アンは近くにいても心地好い。ついて来るのを見て、ほっとけないと思う。愛しくて、手は出してない。…本当に?
最近気がついたのは、そこまでだということ。
なんとなく気づきはじめた違和感の正体を掴みながら、決まりかけた未来を思ってため息をついた。
手の中で弄んでいる指輪が、初めて重いと感じた。