7回目のコール音を聞き終えるのと同時に、さっきまで会いたい気持ちでいっぱいだった頭の中にすっと冷静なじぶんが入ってきて、あわててぷつりと切った。
ヒロトは忙しいんだ、仕方ない。わたし、彼女とかじゃないし。ただの知り合いだし。
「っはい!」
…なんて頭の中でぐちゃぐちゃ言い訳してたくせに、目の前の携帯のサブディスプレイに光がともった瞬間携帯を開いて、1コールの出だしですぐに出ちゃうわたし。はずかしい。でも、表示された名前が本当にうれしくて。
『もしもし?』
「もっもしもし!」
『さっき気づけなくてごめんね。急にどうしたの?』
「やっ、あの、用とかじゃないんだけどね、」
ヒロトはくすりとあのやわらかい笑い方をして、それがわたしの鼓膜を甘やかすみたいに揺らす。どきどきする。すき。あなたにこんなにも焦がれるの。