迫る、迫る、死ぬ。
巨人の薄気味悪いだらしなく歪んだ口から覗く舌に、吐き気がした。大きな手が確実に、わたしを捕まえる為だけに伸ばされる。
ひっ、と息を吸ってかたく目を閉じる。


「お前、死にたいのか」


何か大きなものが崩れ落ちる音。その直前に聞こえた風を切る音は、どうやら立体機動を使ったものだったらしい。
震えで動かなかった体に喝を入れて、瞼をゆっくりとあげる。目の前に立つその人は、冷めたような瞳でわたしを射抜いていた。


「り、リヴァイ兵長…」
「……立て」


立とうとした手足には力が入らなくて、結局座り込んだままになる。兵長は眉間の皺を濃くして、ゆっくりとわたしの前に座った。


「死ぬつもりだったなら、悪い事をした。今すぐにでも」
「違います!」
「…ほぉ」
「死ぬのが怖くて、少しでも現実から逃げようとした、だけであります」


馬鹿正直に告げると、兵長は表情一つ変えずにそうかと答えた。そしてすぐに、わたしに背を向ける。置いていかれるのかと思ったけど、違うらしい。


「乗れ。行くぞ」


しゃがみ込んだ兵長の背中は、小柄な筈なのに広くてしっかりとしていて。体の芯を貫かれたような、鮮烈な感情。恋や憧憬や愛や忠誠、全てであって全てでないような。
そうしてわたしが彼にれるのに、これ以外何も要らなかった。




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