「あー…」
「まーた見とるんか」


ばしい、と後頭部に容赦無く襲い掛かる痛み。いったいな何すんねん!と叫びかけたけどなんとか堪えて白石を睨む。(ちょお涙目なのは見逃してくれ)


「はよ告ればええやろ。浪速のスピードスターの名が泣くで?」
「うっ…せやけどこれはデリケートなもんやし」
「デリケートなあ」


白石が呆れたように見た先、さっきまで俺が見とった場所。仲の良い女子らとたのしそうに喋る、後ろ姿。


「おーい級長ー!」
「あっおい白石!!」


白石の手を引っつかんで教室から飛び出る。その間わずか数秒、浪速のスピードスターの名は伊達やないで?
けどあの子の振り向いた顔は見えてしまったわけで、廊下で顔まっかにしてしゃがみこんだのは言うまでもないわけで。その一挙一動が、こんなに俺をませとるっちゅーことを、君はご存知なのでしょうか?


「ほんま謙也はヘタレやなあ」
「(…白石許さん)」




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