「…折原先輩」
にこ、と笑ったバケネコはひどくご機嫌なようすでわたしの隣に座った。
げ、とわかりやすいように呟いてやったのに、折原先輩はくすくすと笑ってわたしの頭を撫でた。抵抗にと伸ばした手は先輩の手首をつかむだけで、結局はらえない。…ちょっとくやしい。
「君はまだ俺が好きみたいだね」
「……先輩ほんと嫌い」
「どの口がいうの?」
折原先輩は薄いくちびるでわたしを捕まえる。そのくせちう、と小さな音をたてて直ぐさま逃げていく。
無言で見上げると、先輩はゆるりと口元を三日月に歪ませていた。
「この口、ですね」
呟いた声はすねてるみたいでしにたくなる。くすくす笑う折原先輩。こんなに純粋に想うには、あんまりな相手だと思う。