じくじくじくと、何か腐るような音がする。



ふと前を見れば見慣れた人物が視界に入る。いや、見慣れたと言う程に付き合いがあるわけでは無かった。其れほど彼を気にかけているということだろうか。

「秋山くん」

奇遇ですね、と言えば彼は目の奥で探るように私を見た。奇遇というには場所が私達らしいことは分かっている。しかし真実、彼に会ったのは偶然だった。

「本日は彼女はいらっしゃらないようで」
「お前には関係ない」
「おや、詐欺師たるもの社交性くらいは身に付けるべきではないかと思うのですがね」

冷たい表情で私を見つめる彼の表情は彼女の前で見せるどこか甘い顔とはまるで別人のようだった。流石詐欺師ですねぇと言ったところで彼は理解しないだろう。無意識なのだ。彼女に対して自分がどんな顔をしているかなんて彼は分かっていない。私でも気付くくらい、君は分かりやすいのですよ。口には出さないけれど。

「難儀ですねぇ」
「どういう意味だ」
「誰も貴方のことだなんて言ってませんよ」

いつものように笑おうとして、思わず手の平に乗せた鼠を強く掴んでしまった。きゅう、となんともいえない鳴き声が上がる。
彼は眉を寄せたまま、鼠をじっと見つめた。哀れな姿に彼女を写しているのだろうか。君が気付かないだけで彼女はこの鼠よりもずっと強い。彼女を背に庇って、いつも彼女に背を向ける君はいつまでも気付かないのでしょう。君達に対峙している人間に、君達がどう映るのか。
優しいだけではない彼の言葉や、敬愛だけでない彼女の瞳を思い出せば、じくじくとまたどこかが腐っていくような感覚に襲われる。

「秋山くん、君は」

ゆっくりと唇を開く。妙にかさついて重い。
彼が私を見た。その眼が、ああ、苛々する。何故気付かない。君は手の届く場所にいるのに。手の内で鼠が悲鳴を上げる。避難がましい瞳に苛々が募る。君は、

「彼女をあいしているんじゃないですか?」

見開いた眼。苛々は治まらない。どうしてでしょう。ねぇ、秋山くん。私はどうして、君が憎くて堪らない。動物的な衝動で君を、このてのひらに堕ちた鼠のようにしたいなんて、そんなことを思うのです。

「秋山くん」
私は、











タイトル→プシュケ

サイト1ヶ月記念に友人から頂きました。
ねえ見てこれ?すごくないすか?彼女これでも映画+4〜6巻と8巻しか読んでないんですよ?それだけの情報量でこれほどまでに秋直の間合いとヨコヤ君のネズミ具合を掴むとは……やはりただ者ではなかった
いっそのこと私じゃなくて彼女が秋直サイト作ればいいじゃないと思われるでしょうが、残念ながら彼女には既に心に決めた別ジャンルがあるらしいので無理そうですね。遺憾です。
本当にありがとうございます友人!私でさえ間違えて覚えていた記念日を祝ってもらえるなんて素敵なサプライズでした!これからも仲良くしてください。

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