どうして私体がこんなに重いの。頭の中は穏やかに凪いでるの。土の匂いだけ綺麗だから私は目を開けてすぐそばの空を見て、口の中に詰まっていた泥を吐いた。曇った夜空いっぱいに響く唸り声の正体は簡単に思い付いたので恐くは思わない。ただ夜道は少し恐いな。小さな村だからいやな事件に巻き込まれることなんてないだろうけど幽霊なんかが出たらどうしようか。そう言う私にあの人は呆れ顔をするの、小さく馬鹿がって怒って黙って車に乗せて私の家まで送ってくれていた。
あのひと。
みやたせんせい。



何の話をしてたんだっけ。頭がからっぽになったみたい。うまくものを思い出せないの。何の話をしてたんだっけ。別に構わないけど、あの人のことは忘れたくないな。私のだいじなひと、何の話をしてたんだっけ。いつの間にこんな真夜中になったんだろう、院長室で話してたときはやっと日が沈んだくらいだったのに。きゅう?求導師様?そうだ求導師様の話をしたんだった。他には何も分からないけど。気が付いたらあの人の手が私の首を掴んだんだっけ。あの人の骨ばった手の感触が。感触が。冷たさが。感触が。ぎゅうっと締め付けられて止まった息よりもあの人の手の硬さ。硬さがとっても悲しかったので。全身にまとわりついた泥と同じくらいの冷たさだったので。わたし。


いきてるのよ。



おもいだせないのほかになあんにも、どろだらけでみっともないけどあいにいかなきゃ。ひどいかおをしたせんせい。せっかくつくってくれたおはかは、ごめんなさい、わたしにはいらないです。わたし、わたしたちといっしょになればもうあんなひどいかおはせずにすみますよねせんせい。くるしくないです。かなしくないです。せんせいのかなしいをきづいてあげられなくてごめんなさいもう。もうだいじょうぶ。
どこですか。どこ。どこ。めはあまりよくみえないです。からだもへんにおもいです。だけどもうだいじょうぶですからね。どこ。こわくないです。なあんにも。どこですか。


なあんだ。そんなところに。
どうして、そんなこわいかおしてるんですか?




Title:舌
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