(短い)


毛布を被った途端雨音が遠くなります。明日は布団を干したかったのに。ふかふかの太陽の匂いを恋しく思って、傍らの背中に額を寄せました。お日さまには似ても似つかぬ人ですが、私に惜しみ無く与えてくれる暖かさだけそっくりだと思うのでした。
どうしたのと微動だにせず、こちらも向かずに尋ねてきます。ふわふわの生地しか今私の目の前にないので、それでもいいのですけど。何を読んでいるのか聞くと、最近何かの賞を取ったという話題の小説のタイトルを答えてくれました。映画化もするんだって。と付け加えられました。心理学の本以外も読むのだなと、私は初めて知ったのでした。どうにも謎の多い人です。
ようやく振り返った秋山さんは小さく吹き出しました。「お前お化けみてぇ」だって。失礼な。確かに頭から毛布を被ったままですけれど。本を閉じる音がして毛布を捲られました。ものを読むときしか使わないという眼鏡を掛けたままの秋山さんの顔が目の前に。お化けはひどいので撤回を求めます、笑って流されてしまいましたが。毛布で閉ざされないせいで雨音がまた近づくけど、太陽みたいな人もそこにいるので特に問題はないのです。布団もまあ次の機会まで我慢することにしようと思えます。
すると、何を思ったか秋山さんは私の毛布に潜り込んできました。二人で毛布を頭から被った、外から見たらとてもおかしな光景でしょう。暗い毛布の中で向かい合う私たち、変なの。思わず二人で笑います。なにやってるんですか、って聞くと「かまってほしそうだったから」だって。こつんとぶつかったおでこの暖かさ。たったこれだけで私は世界中の日だまりを手に入れられるのです。
今の暖かさにかまけて、今までの悲しいことみんな忘れられますように。これからの私達に苦味など少しもありませんように。実を言うと秋山さんがさっき読んでいた本、私も昨日買ったので読み終わるまで結末は話さないでくださいね。面白かったら映画も観に行きましょう。約束な、という言葉にどれほど救われていることか。
毛布の内側はこんなに幸せなのです。








無防備な話を書きたかったというかなんというか
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