一人ぼっちで丸くなったベッドが、小さな船になってどこか遠くに流されていく様子を空想した。本当にそうなった気がして毛布から頭を出してみた。勿論ベッドは私の部屋で大人しくしていた。子どもみたいだなあ。そう思うけど、目を閉じてみるとまたゆらゆらと波に揺れて岸から離れていくような気がしてしまう。子どもみたいだなあ。枕元の携帯をなんとなく掴んでみた。あの人に繋がるものだからかもしれない。ちっぽけな機械が命綱みたいに思えるから不思議だと思う。
眠ってるうちに流されてないかな。目が覚めたら遠くに流れ着いていたらどうしようか。眠れなくなった。変なの。そんなことあるはずないのにね。だけどあの人が隣にいない今の私はそんなことさえ自信をもって言えないんだから、つくづく嫌になる。眠れない。急に呼吸が気になり始めて、吸って吐いてを意識するうちになんだか息の吸い方がよく分からなくなってきて。息をするって不思議だ。教えられたこともないのに今までずっと正しく続けてきたなんて信じられないような気がする。縮めた手足が何だか寒いのはそろそろ秋だからだろうか。このまま死んじゃったりして。息の仕方を今更忘れて。
急に会いたいなんて言ったらあの人は驚くだろう。そのくせすぐに駆けつけてくれるんだろう。嘘みたいに優しい人だから。だって、流されたら、死んじゃったらもう二度と会えない。眠るのはやめて会いに行こうかと思った。どうせ怒られるだろうけど。
もう一回頭を毛布から出してみた。窓から少しだけ差した月明かりで部屋の中が少しだけ見える。誰もいない。かちかちと鳴る時計と私の息の音だけ馬鹿みたいに続いていく。いつ止まるんだろうか。やっぱり眠るのはもったいないなあ。あの人にはあと何回おやすみを言えるんだろう。
眠りたくないな。起きられるか分からないのに。子どもだからこんなことを考えるんだ、なんてあの人は溜め息をつくかもしれない。そうじゃないのに。ただ離れたくないだけなのに。
寝返りを打ってみた。小さな船が揺れた。時計と息の音以外とても静かな部屋だから、無性に泣きたくなった。寂しいとは少し違うから携帯を握りしめて目を閉じた。夢で会えたらいいけど。本当は眠りたくなんかないけど。
おやすみなさい。いかないでね。おやすみなさい。







BGM:睡眠時間
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