(グロ注意)


















貴様に分かるだろうかイカレ軍人、この手の中で命の尽きた子どもの肉がくしゃりと崩れて指の間から流れ落ちていく感触を。空っぽになった眼窩の奥に薄い色の脳が艶々と濡れて光っているんだよ。私はその軽い体を地面に横たえて遠くに離れて転がっている桃色のスリッパにくるまれた足や、大きなリボンが髪に絡まったままの頭皮を拾うんだ。それから穴を掘る。我ながら頑健な体は皮肉にもこんなときにも十分に働いてしまう。人数分の穴は案外にすぐ出来上がるんだ。少なくとも日没には間に合うのだよ。それからそっと穴の底に一人一人の部位を沈めて再び土を被せる。即席の十字架を人数分立てる。花を摘んでそこに飾るんだ。
馬鹿なことを?そうか貴様は笑うのか。その通りだよ。あの子ども達は朝日が昇る頃には何事もなかったかのように無邪気に遊び回るだろうね。傷ひとつ無い足で広場を駆け回るしおしゃまなリボンを揺らして笑うだろう。それもまた何かによって酷い有り様に殺されてしまうんだろうに。貴様にとってこの村は天国なのだろう。いくら狩ろうと獲物は永遠に尽きない。朝日が昇れば血腥い昨日は全て帳消しだ。だから私は日没までには墓を掘らねばならないのだが。
そうだよ。墓を掘るんだよ。
時に貴様、かの戦争では一体何人殺したのかな?その愛用のサバイバルナイフは何回血と脂を巻き付けたのかな。いやね他意はないよ。ただ貴様が塹壕の中でそのナイフとガトリングを抱き抱えて泣きながら震える様子を想像してみたかっただけだ。喚きながら殺し回ったのだろう。殺しすぎてイカれた頭が治らなかったのだろう?なんだ怒ったのか。おい子どもを踏むんじゃない明日には生き返るんだ。待て、

……………………。
…………、………………。

我ながら頑健だと言っただろう。私にはこれしかないんだから。ただでさえ狂った頭に血まで昇った退役軍人に負けるほど落ちてはいないよ。安心したまえ、貴様の分の穴も掘るよ。大人一人入る穴を掘るのはもしかしたら流石の私も難儀かもしれないね。
毎日の習慣なのだよ。穴を掘ることが。決して、貴様を殺すことではない。罪のない子等を惨殺した貴様を断罪することではないんだ。何故って、貴様も知っているだろう。私にそんな資格があると思うかい。振りかざす正義をこのときばかりは私は見失ってしまうから仕方なく正当防衛の下に貴様を肉塊に変える。
墓を掘る作業は案外に単調でね、余計に物を考えてしまうんだ。ざくざくとシャベルから伝わる硬い土を削る感触と一緒に硬くなった子ども達の体の手触りを思うんだ。朝が来れば全て元通りだと自分に言い聞かせてひたすら掘り返す。この村は私に言わせれば繰り返す地獄だね。しかし私はヒーローなんだ。やめる訳にはいかない。こんなことしかできない私はひたすらに墓を掘る。
それが貴様に分かるかイカレ軍人。
分かるまいね。









たまに現実を見る英雄とか
Title:泳兵
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