残念ながらお前が好んでいるらしい俺という存在が嫌いだった。憎んだとも。あらゆる指摘に対してことあるごとにお前を盾にする自分が信じられなくてその度に催した吐き気と戦うのがひたすらに俺の日常に変わってしまったのはいつからだったかもう定かではないし明らかにさせたくもない。
ソファーに投げ出された真っ白い足首が目に焼き付いた。これ引っ張って地獄まで堕ちていく?悪くないと思えるから本当に救いようがなくさながら蜘蛛の糸のように彼女にしがみついていたって一生救われやしない。眠るお前は今目の前にいる男が何を考えているのか等毛程も気付きはしないんだろう。人の情緒には決して疎くはないお前が俺の腹の内を悟らないのはその哀れな盲信の結果だとしたら俺は一刻も早く菩提樹に縄の輪をぶら下げて首でそこに吊り下がってもう二度と欺かず笑わない肉の塊になった方がいい。ゆらゆら揺れる靴を脱いだ爪先を見たお前はその時になれば俺の中にあった全てに気付くだろうかと空想は進む。そういえば菩提樹の花言葉は夫婦愛だったと思い出して鳥肌を立てて笑えた。
お前が求める限り傍にいるというのは決して献身の念から来たものではないと最初から悟っていたくせに素知らぬ顔をしていたのだから我ながら何でも騙せるものだと感心する。正直者を食い尽くそうとしてるのはさて誰だろうか、俺ですね。
ああ何も分かっていやしないのはどちらだ。身動ぎもせず眠るお前の隣には未だ欺くし笑いもする欺瞞の生き物がいるよ。つくづくクズなこの生き物は実を言うと今何も分からないままただただひたすら手前の腹の中を探るのも恐れて身動ぎもせずお前が目を覚ますのを恐れている。
このままどっか遥か彼方に逃げ去ってしまえたら。嘘だ。どうすればいいのかさえ分からないんだ。俺はお前を守りたいのだっけ?これだって嘘ではないかと言われれば俺に反論の術はない。だから口を噤む。
いくらお前を犠牲にすれば。俺は気が済むのかな。混乱を極めた脳内を鎮めるのに何回使うつもりだろう。部屋が静かすぎるんだ。この際早く目を覚まさないだろうかと心から祈った。早く俺を指差して糾弾してくれたらいい。
前科者にお似合いの腐りきって穿った業と言えばそこまでなんだろうが今すぐそれさえ打ち捨てて逃げ出そうというのにそれさえ出来ないのもまたお似合いなんだろうか。救いの手さえ伸べるのを憚る欺瞞まみれだから。この腹の中を探るカルテもなけりゃ俺のための方舟の席もないのだ。不明瞭五里霧中のまま迷走するのに果てもない。ああもう何も分かりはしないから考えるのはやめておこうか。どうせこの手にあるのは蜘蛛の糸ではなく太い枝から垂れる縄の輪だし例え死んで羽が生えたって少しも俺には似合わない。真っ白い足首。
どうせならお前がその羽潰してくれたらいい。
身を屈めて白い耳元に口を寄せる。





「死んでしまいたい」












BGM:ハイパーベンチレイション
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