あーあ泣いた、咎める目で隣の男を見てやる。にも関わらずこいつときたらもう慣れたと言わんばかりの余裕ぶりを以て溜め息をついて彼女の背中に手を乗せる。あのなぁ。
「あれはフィクションだから」
「……だけどひどいです、こんな」
薄暗い館内でも、大画面の光で人の顔も案外鮮明に見える。画面の青を閉じ込めた雫がぽろりと目から零れて白い手の甲に落ちて弾けた。それをあいつが手を伸ばして親指で拭ってやる。
うん、お二方ちょっといいか。ここ映画館。公共の場。
「泣いてんの今お前だけだぞ」
その通り。あまりに誰もが予想できた展開だから皆ここに至るまでに多少の精神防御完成してんだよな、俺もしかり。
「す、すみませっ……」
自力じゃ止まらないらしい嗚咽を噛み殺してる。音でかくてよかったな。戦場ド真ん中で熱く男の友情を叫ぶスクリーンの中の戦友達のバックで一際大きい爆発。ハリウッドすげぇ。
戦友に抱き抱えられた男が微かに笑ってこと切れた瞬間また横でひくっと彼女の喉が鳴った。ああもう。フレデリックがこのタイミングで死ぬことなんて冒頭から予見出来ただろ!戦争が終わったら結婚するって言ってたから!
閑散とした館内は本当に数える程しか観客がいない。不幸中の幸いってやつだ。焼け石に水ともいう。
「………」
ついにその大きい手が彼女の頭を自分の胸に抱き寄せた。あやす手つきは完全に手慣れている。だから嫌なんだこいつら!彼女いない歴を着々と更新する俺に対する嫌がらせですか、爆発しろ!少しずつ収まる嗚咽。そりゃ安心できるだろうよ、二人きりの世界はそりゃあ心地いいだろうな。しかしお前らその隣で超気まずい思いと一人戦う俺の存在を忘れていやしませんか。忘れてるよね!
ありったけの気力であいつを睨み付けてやる。こっちの視線に気付いて、あいつは例の鋭い目でにやりと笑ってきやがった。
「なんだ、羨ましいのか?」
「我が子の前で見せつけてんじゃねぇよ、親父」
母さんから手離せ。









Title:クロエ
myuさんリクエストの「第三者目線で秋直」でした。
書いてから何ですがこれ第三者目線カテゴリに入るんですかね?一応LGには出てこない人……しかしただの親子ネタじゃねぇかと返されたら反論できない
いやあの……各地のサイト様方が凄い第三者目線をたくさん書いていらっしゃるから……何となくやりたかったおまわりさんとJkはやっちゃったし何かこう捻ってみないとどこかのものと被ったりして申し訳なくなりそうだと思い悩んだ結果本来のコンセプトが危うくなるというテンプレでした
これ第三者目線じゃねぇよ!という場合は着払いで送り返してくださいませ!リクエストありがとうございました!
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