全方向からの圧迫が体中の骨という骨を軋ませてるのが分かるので痛いのを紛らわすように足掻こうともしたがそんなことをすれば俺はもっと早く絶命するだろうということは想像に難くなかった。やめた。
代わりにぼこりと口から吐き出された白くて濁った泡がぐしゃぐしゃに潰れてどこか遠くに行った。
酸素をなくしたせいで動かす気をなくしてた頭がますます馬鹿になったみたいだ。上はどっちだっけ。水面はどちらですか?右ですか左ですか。頭の方ですか足の方ですかさてはそんなものはありませんか。母親の腹の中みたいな閉じきった暗い水の中だ。違うのはただこれから生まれるのかこれから死ぬのかただそれだけの瑣末な点でしかないことに気付いた。
また吐いた気泡の代わりに冷たい水が流れ込んで胸を刺した。肺を外から潰して内から刺してなんだ俺って奴はもう死ぬための要素を贅沢なくらい与えられているんだなと安心する。
ところであの彼方の方にある微かな金色は何なのか誰か教えてほしい。自分で確かめに行くには遠すぎる。たどり着くよりも早くぺしゃんこに潰れて内側の穴から吹き出した血で辺りの水を汚してただの皮の袋に変わるだろうなと思う。まるで水面からの光のように見えて目障りだから消して来てほしい。
救済などいらないから贖罪だけが欲しい。称賛も感謝も俺には受け取る資格がないことに気付いてくれないかと叫ぼうとしてもう俺の肺の中は針みたいな水で満たされていることを悟った。何も言えなくなっていた。
どうして俺を生きる価値ある人間のように扱ってくれるんですか。それさえ聞けなくなったからただゆっくりと金色が俺のもとまで差し込むのを眺めていた。それが何なのかはもう分かっていた君だ。なにもかも赦して信じる愚かで優しい君だった。
ねえ俺を助けに来たのなら帰れよ。ここは寒いよ。君まで苦しませてしまったら俺はもうどうすればいいか分からなくなる。心底から伝えたかった。君は悲しげに顔を歪ませる。
俺をそっと引き寄せたその細い腕が汚れやしないか心配だった。もしかして君は泣いているのか。俺のために。俺を望んでくれているのか。
出ないはずの言葉が俺と君の間の僅かな水を震わせて君に伝えた。君は赤い目のままながらそっと微笑む。
これがただの他愛ない夢だと言うことは知っていた。だけどその微笑だけでもう何も恐くないと思えた。
そして君は言葉を俺の口に含ませるようにして吐く。
泡沫のごとく。














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