口で言うほど簡単じゃないことほど口で言わなきゃ伝わらないのです。勿論以心伝心って素晴らしい四字熟語を私達は持っています、しかし、伝えようという意志を持たないまま知らせようと足掻くなんて、それこそ愚の骨頂です。痛いものをひそかに抱えてうずくまっても、いつでも誰かが気付いてくれるなんて限らないんですよ、いえ、出来るかぎり気付くようにはしようと思ってます。だけど分からないでしょう?手遅れになったらどうするのですか。
別にいいとでも?……いいですか。私の目、良く見てください。逸らさないで。昔からの君の悪い癖です。何もかも噛み潰して。彼女に見苦しいところを見せられないと虚勢まで張って。分かっていますよ。分からない訳がないでしょう。
私は、君のことをずっと見てきたのですからね。
何ですかその顔。照れですか。似合わないことをして。彼女に見られますよ。大好きな彼女に。まあ安心なさい、優しい彼女はそんな君のことも包んで愛してくれるのでしょう。……照れ隠しなのは分かっているからいい加減にその辛気臭い仏頂面はおやめなさい。昔を思い出します。君、幸せなんでしょう。大切なあの人と一緒に生きていけて。それらしい表情をしたらどうです。
障害は多く大きいでしょう。特にあの男。手段を選ばぬ蛇のような人間。いつだって君の手から彼女を奪わんと虎視眈々と狙って。あれは彼女の好意を買うための品でしょうね、見てご覧なさい、彼女の嬉しそうな顔。君以外の人間にもあんな顔を見せて。おや、どうしました。彼女のところに行きたい?分かりましたよ。
知っておきなさい。痛いことがあれば泣けばいい。苦しいなら喚きなさい。私が飛んで行きますからね。
私はね。君を、愛しています。




「そろそろお母さんが恋しくなったようですよ」
「ありがとうございます葛城さん、この子のこと見ていただいて!」
「お前人の子に何をぶつぶつと話してんだ。愚の骨頂とか聞こえたが2歳児に妙な単語を教えるな」
「賢い子になりますね!」
「単語のチョイスが悪すぎる」
「全く口煩い父親ですね。君、直さん似の可愛らしい子に育つのですよ」









Title:クロエ
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