2010/10/29 02:56

ふと、空をみる。
ビルに囲まれた、青い広い空。

この頃僕の周りでは、めっきり冷え込んで寒い日が続いていた。つい最近までは近年稀にみる猛暑日だとか報じられていたニュースでさえ、内容がぐるりと逆方向。北海道では初雪すらふったらしい。
吐息もどこか、白く色が変わっている気がする。
……もうすぐ秋も終わっちゃうのかな。今年はまだ、サンマも栗も焼き芋すらも食べてないのに。金欠苦学生って悲しいな。


ふと、空をみる。
教室の窓にかこまれた、灰色染まった曇り空。

やっと終わった、試験期間。
返ってきた答案用紙に書かれた点数も、前回よりはちょっと上がっている。
これでやっと一安心。
しばらくはテストのことは忘れようと、それを机の引き出し奥深くへと突っ込む。
今日の放課後はなにをして過ごそうか?久しぶりに後輩と遊びにでも行こうかな。


ふと、空をみる。
思い出の中にかこまれた、幼馴染みとみた夕焼け空。

夕焼け小焼けの赤とんぼ、手をつないで見たのはいつの日か。
田舎の空は広くて遠い。
真っ赤に染まった太陽が少しずつ沈んでいくのを、小さかった僕と彼は横に並んで眺めていた。
どちらかのお腹が「ぐぅー」と鳴れば、彼はニカッと笑って帰ろうかという。
その笑顔が眩しかったことは覚えてはいるけど、何故か笑った顔自体を思い出せなくて。
そうかこの頃の僕は、彼のニカッと笑った顔を見れていないからか。
一番最後にみた彼は、どこか悲しそうに歪んだ表情だった。







この頃僕の周りでは、めっきり冷え込んで寒い日が続いていた。
それを暖めてくれるはずの彼は、今はもういない。
やっと訪れた試験期間からの解放を一緒に喜こんでくれる彼も、今はもういない。
夕焼け小焼けの赤とんぼ、二人で遊びまわっていたのはいつの日か。


ふと、空をみる。
なるほど世界は、こんなにも広い。
僕一人には広すぎるくらいだ。
十分すぎる世界の広さは、時に人に寂しさを思わせる。

やっぱり君がいないと寂しいみたいだ。だから……早く帰ってくればいいのに。
君は今、この世界のどこにいるのだろう。君もこの同じ空をみているのかな。君に会いたいなあ。

END
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単純に正帝。

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