2011/10/21 03:45

 帝人をはじめて見た時、細っこい体に覇気のない顔、なんて情けない男なんだと思った。
 平和島の愛弟子というのだから、きっと馬鹿力でごり押しするようなまさに強者という奴を予想していたのだが、当の本人の腕はあまりにも細く喧嘩馴れすらしていないかのようだった。
 では、折原のように頭の切れる頭脳派なのかと尋ねてみれば、「僕はあの人のように、喧嘩しながら思考を凝らせるほど器用ではありませんよ」と本人が言っていた。本人が言うのだから違うのだろう。
 殴り合いに快感を覚え、喧嘩狂みたいになってしまった奴も自分の周りにはいるが、そいつと比べると帝人の感覚はあまりにも"正常"。少なくとも血をみて興奮するような感覚の持ち主ではない。
 狂った感覚ではなく、強靱な精神を持って喧嘩を勝ち抜いて行くタイプもいる。何度潰されても何度倒されても、「勝つ」という一心で何度でも立ち上がる奴。そういう奴は大抵、生まれながらの天性といってもいいほどの"プライドの高さ"と"頑固"を兼ね備えた性格の持ち主だった。つまり"負けず嫌い"といってもいい。




 平和島のように肉体派でなけれは、折原みたいな頭脳派でもない。

 力任せにぶつかり合う、泥臭い喧嘩には向いていない奴だと、彼の見た目しか知らなかった頃の自分はそう彼をみていた。
 そんな奴に一ヶ月ほど前、俺は殴り合いで負けてしまうのだが。

 一度触れさせてもらった帝人の腕には、薄くしなやかな筋肉が申し分のない程度にしかついていない。余計な重さがない分動きは秀逸して早いのだが、振り下ろす拳は残念なほどに軽い。スピードは合格点、でも渾身の一撃を必要とする殴り合いの喧嘩にとって軽い拳は致命傷。

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