2010/06/28 14:46

はぁー、とため息がこぼれる。
さっきから痛みはじめたこめかみを、指でさすって頭の中を整理する。
僕の足元には一人の男性、両手を床につけて深く土下座の状態のまま微動だにしなかった。
僕の手元には雑誌が数冊、しかも表紙には水着姿の女性がアップで写っている際どい雑誌だった。
その不愉快極まりない雑誌は、もちろん僕のものではない。
(この足元で動かない、彼の私物だ)
こうして手で直接持つのだって、本当は嫌だ。
今すぐにでも引き裂いて、窓の外にぶん投げたい位だ。
というか、実際それを実行に移そうかと思う。

「ちょ!破くのはいいっすから、窓の外は勘弁して下さい!」

僕が窓を開いて雑誌を持つ手を振りかぶった瞬間、ずっと無言だった相手が叫びだした。
(ちっ)

「とりあえず、この雑誌の事を僕にちゃんと説明してくれますか?」
「……説明って」
「そもそも三次元に興味ないんじゃなかったんじゃないんですか?」
「それには深い事情があるんすよ」
「なんなんですか?結局、遊馬崎さんはこうゆう女の人が好きなんですか?」
「ちょ、俺の話を……」
「どうせ僕はこんな胸はないですからね、体も柔らかくないですし」
「あの、帝人君?」
「妊娠だってできないですし、可愛くもないですし」

こんな雑誌に載っているような女の人ほど綺麗でもないし、そもそも僕は異性でもないし、男だし、どうせ僕なんか。

表紙のお姉さんの艶やかな笑みに、男なら誰でもときめいてしまうだろう。
でも、この人だけは、この目の前でオロオロしている人物だけは、どうせ二次元浮気だけで終わるだろうと思っていたのに。
まさかこんなに簡単にも裏切られるとは。
いや、三次元に欲情できたことに素直に驚きだ。
なんたる不覚。
こんな雑誌、こんな雑誌、こんな雑誌……、

「帝人君!?落ち着いて、それライターすよ!」
「すべて燃えて灰になればいい」
「ちょ、危ない危ない危ないあぶない!」
「離れて下さい、遊馬崎さん。僕は今、あなたの手を燃やしてしまうかもしれません。いえ、燃やします」
「しっかりして!」








―――――――――――――
遊帝が好きだ、愛している。
きっとゆまっちは、グラビアの中に帝人君そっくりなお姉さんを見つけたんだと思います。
それか悪ノリの狩沢さんに渡されたか、二次元愛好者のゆまっちを心配したダラーズの知り合いに強制的に渡されたんだと思う。

どちらにしろ、ゆまっちかぁいい!

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