2011/02/03 23:39

彼との行為に時々、違和感を感じることがある。
行為の全てをエスコートしているのは彼の方で、僕は彼から与えられる快感と苦痛を受け止めているだけに過ぎない。
しかし、彼の格好と彼の表情はどうみても女性そのものにみえて。
相手はあの臨也さんだというのに、まるで自分自身が……

「女の人に犯されている」
「!?」
「つまりそう錯覚しちゃうわけですか。相手があの臨也さんだっていうに」
「正臣、もうちょっと遠回しした言い方できないかな……」

そう、僕の恋人には少し変わった趣味があった。"女の人のような格好がしたい"、しかしオネエ系(いわゆるオカマ)の人達とは違い、純粋に女物の洋服を着て女の人のように化粧しオシャレがしたいだけの女装趣味の持ち主であった。
その女装への気合いの入れようは半端なものではなく、着替えた後の彼は服装や化粧や身のこなし、全てにおいて完璧に男の人ではない。事実、臨也さんに女装はよく似合っていたし、作り物であるはずの胸は自然な膨らみを主張している。(彼に聞くと化粧品や衣類などは妹さんが用意してくれるらしい)
彼の恋人である僕自身はその趣味に反対どころか、むしろ理解している方だと思う。女装した臨也さんは綺麗だと思うし、彼が楽しんでいるのなら人に迷惑をかけない範囲で応援してあげたい。
(長髪ウィッグに綺麗なメイクで微笑む臨也さんは、確かに目の保養なのだ)
ただ問題なのは、その格好のまま僕とセックスしたがる所にあった。

「自分の中の男としての自尊心というかプライドというか、そういった類が崩れていくような気がするんだ」
「自尊心もプライドも同じ意味だぞ、帝人君」
「臨也さんの女装が完璧すぎるからいけないんだ、僕の彼氏があんなに可愛いわけがない」
「なら、女装やめてーっていえばいいんじゃないのか?」
「女装やめるのはダメ、僕の目の保養が消えてしまうのはダメだ」
「…………」

放課後の教室、幼馴染みの正臣に人生相談にのってもらっていると、教室の窓の外から僕を呼ぶ声がした。
驚いてみると、校門の辺りに人の群れ。中心には愛用のファーの付いたコートにミニスカートとブーツ、長い髪を二つに結んだ臨也さんが大きく手を振っていた。思わずその満面の笑みにきゅんとしてしまう。手を振り返す僕と臨也さんを、臨也さんの周りに集まっていた人達が驚いた目で見ていた。綺麗な女の人が男の声で突然大声をだしたら、誰だって驚くだろう。

「正臣ごめん、臨也さん来ちゃったから先帰るね!!」
「おぉ、早く帰れバカップル」
「また明日!!」

急いで臨也さんのもとへと向かう。
きっと臨也さんの事を男の人だと気付いていない馬鹿が、臨也さんに声をかけようとしているに違いない。
臨也さんの完璧すぎる女装に被害者がでないためにも、両足をより速める。









「おい紀田、あれ竜ヶ峰の姉貴?」
「いいや、残念ながらあれは帝人の"彼氏"だ」
「かれっ……えぇ!!!?」
「気持ち悪いカップルだよな……」










END

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