2011/02/01 03:23

僕らは互いに、違う存在として生まれてくれば良かったのだ。
君は"入江正一"という人物以外の存在に、僕は"僕"以外の存在に。
そうすればきっと、もっと素敵な出会いの仕方ができたはず。
僕らのあの熱烈な出会いもいいとは思うけど、なんせここは君にとっては悪夢みたいな世界だ。そして悪夢の原因はどうやら僕で、僕がどんなに素晴らしい新世界を作ったって、君は喜んでくれないんだろう。
僕はただ君には笑っていてほしいだけなんだよ、もちろん僕の隣で。




「そうだ、そうすればいいんだ」
「…………なんですか、突然」
「あのね考えてみたんだけどさ、僕が地球人で正チャンが火星人、二人は違う生命体で住んでいる星も違うの」
「ファンタジーの話ですか?僕そういう系の会話をするのが苦手なんですが」
「なら、聞くだけ聞いといて」
「はぁ」
「もしもだよ、僕が地球人で正チャンが火星人ならさ、二人はもっと素敵な出会いをしたと思わない?僕らの出会いの場が宇宙だったならパラレルワールドも戦争もなにもない、僕らの関係を阻むものが全くないんだよ。それならきっと二人は、幸せになれたはず」
「幸せに……ですか」
「うん、僕が地球で正チャンが火星。お互いの星から相手の星へといつも愛を届けるんだよ、ロマンチックだろ」
「そんなことしなくたって、僕は今すぐにでも幸せになれるというのに。あなたが側にいてくれさえいれば」
「でも今の僕らの愛は、すぐに誰かに邪魔されるだろ」


『邪魔ばかりされてしまうならいっそ、僕らは宇宙で出会うべきなのだ』







僕が作る新世界を君は悪夢みたいな世界だという。
誰かが傷付き、誰かが傷付ける、誰かが死に、誰かが幸せになる。そんな不平等で回る世界を君は嫌うけど、世界なんて最初からそういうものだろう。
僕らが幸せになるには、誰かが不幸にならなきゃいけないんだ。
僕は不幸より幸せが欲しい、たとえその代わりに誰かが不幸になろうとも。
君だってそうなはずだ。
悲しいより嬉しい、苦しいより楽しい、痛いより気持ちいいを望んでいるじゃない。
大丈夫、そんな君を誰も責めないから。たとえそんな奴がいたとしてもだよ、僕が君を守ってあげる。

ねえ、二人で幸せになろう?




僕が作る悪夢の中で、君は未来を見つけて欲しい。
そうしてくれないと僕は、君を悪夢(そこ)に閉じ込めてしまいたくなる。

笑っていてほしいんだよ、僕の隣で。



END



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