2011/02/02 02:00

※年齢差逆転
※17才の高校生臨也さんと20才のコンビニ店員(バイト)帝人君。
※臨也さんが同級生の静雄さんと普通に仲がいいです。






「ねぇ、」
「あ゙ぁ?」
「話しかけただけじゃん、睨まないでよ」
「……なんだよ」
「あそこのお兄さんさ、あの今レジで接客してる前髪の短いお兄さん、可愛いと思わない?」
「可愛くないとは思わねーが、俺に男を可愛いとかいう趣味もねーよ」
「俺にもないよ、静ちゃんは馬鹿なこというからほんと好きだよ」
「俺はお前が大嫌いだけどな」
「あはっ」





今日はいい天気で、目覚めもよくて、道が空いていて、出勤もいつもより早めで、心にいい感じに余裕ができた状態で仕事ができる。
なんて良い日なんだろう。
こんな時は自然に接客が丁寧にできる気がする、するとお客さんに喜んでもらえる、お客さんに褒められると自分自身が喜ぶ、なんて良い日なんだろう。
なんと素晴らしいサイクル。

そんな良い日にふいに投下された不安の種。
まだ昼間だというのに来店してきた男子高校生の二人組、何故か僕が立っているレジの方をジロジロとみている。
彼らの服装はチャラチャラとしていてだらしなく、片方はなんと金色に髪の毛を染めていた。そんな格好で学校の授業中であるはずなのに店にやって来た二人組を、お世辞にも優等生風とはいえなかった。金髪の子は目つきが怖いし、黒髪の子は得体の知れないニヤついた表情が怖かった。そんな今の僕の不安の種。

なんでこっちをジロジロとみているのだろうか。もしかしてもしかしなくても、万引きをするための監視!?こちらの様子を探っているつもりなのか!?残念だか少年達よ、コンビニ店員歴2年のお兄さんの監視力をなめちゃいけないよ。
僕も負けじと見つめかえす。






「静ちゃん静ちゃん静ちゃん、どうしよう!!」
「ん?脳内爆発でもしたのか?安心しろ、それはもとからだ」
「うん、一度静ちゃんの頭をかち割りたいよ」
「……」
「ごめんごめんごめんごめんなさい、頭蓋骨ごと脳内潰れちゃうって」
「……で、なんだ」
「さっきのお兄さんがずっとこっちを見てるよ。なんだろうあの目、誘ってるのかな」
「あの警戒心丸出しな目が誘ってる目に見えるなら、本当にお前の頭は残念だよ。さすが折原残念」
「どうしよう、本当にあのお兄さん可愛い、チューしたい」
「…………」



高校生二人組はなにやらコソコソと話をしている。
やはり、怪しい。
もしもに備えて心の準備をしなくちゃいけないんだろうけど、どうしたもんか、緊張で落ち着いていられない。

「ねぇ、店員さん」
「えっ!!はっはぃ!?」

知らないうちにレジの前に立っていた高校生二人組の黒髪の方。
あまりにも不意打ちだったので変な声が出てしまった。それを相手は苦笑いで流してくれたが、こっちは恥ずかしくてしかたがない。
逃げ出したい両足を踏み止ませて、とりあえず相手の顔をみる。
白く柔らかそうな肌、少し釣り上がった目、スッと鼻筋が綺麗で、バランスのいい口、さっきはよく見えていなかったけど近付いてみるとよく整った顔だなと思った。
ふいにその形のいい口が弧を描き、にたりと笑った。
ほぼ無意識に身動いだが、年下の高校生である相手になにを動揺しているのか。
ただ、その笑い方がちょっと怖かった。

「なんでさっきからこっち睨んでんの?」
「……え?」
「睨んでいたでしょ、お兄さん」

これは、まさか
『お兄さん、なにガン飛ばしてんだよ』
『えぇ!?』
『喧嘩売ってんのか!?あ゙ぁ!?』
『そ、そんなぁ!!あべしっ!!』
という展開フラグなのか!?
まさかとは思うがでも、最近の若者は血の気盛んで物騒だと噂だし。店内で騒ぎを起こしたら即クビ決定だし、なにより痛い。物理的にも精神的にも。

「いやいやいやいや、睨んでなんか!!」
「ふーん、なら見つめていたの?」
「……見つめて?」
「違うの?じゃあやっぱり睨んで」
「いや!見つめていました!!この眼球でしっかりと見つめていました!!」
「そう、良かった」

にこっ。
さっきの怖みのある笑い方ではなく、表情が綻んだような自然とでてしまったような相手の笑みに、不覚にもきゅんとしてしまった。
別に男が好きなわけじゃない。相手の整いすぎている顔からくりなす優しげな笑顔に心が揺れてしまっただけだ。

「お兄さん年いくつ?」
「えっ、と、今年で二十」
「じゃあ三才差か……悪くないね」
「はい?」
「携帯貸して、持ってるでしょ?」
「えっちょ、なにして」
「はい、俺のメアド入れといたから」
「……なんで?」
「なんでってそりゃすぐに連絡とれないと不便でしょう?」
「連絡?なんのために?」
「うーん、例えばデートの場所決める時とか?」
「デート!?」
「うん、付き合ってるんだから当たり前じゃない」
「付き合っ!?誰と誰が!?なんで!?」
「お兄さん疑問形が多いなー」
「いやいやいやいやいやいや、それはないですよね」
「ん?だってお兄さんが俺のこと見つめていたのってそれ、好意からでしょ?」
「はぁ!?」
「お兄さん可愛いし、うん、付き合ってあげるよ」

今時の若者は、確かに物騒だった。
色々な嵐を巻き起こして、二人組はお店を去っていった。
残されたのは彼のメアドと電話番号、それから居心地の悪い店内の雰囲気。
ちょうど出勤してきた同僚には変な目で見られるし、ずっと隣のレジにいた店長にいたっては苦笑いを浮かべていてどうしようもできない状態だった。
その後の接客がひたすら失敗続きだったのは、いうまでもない。











「お前、強引すぎじゃね」
「えー?」
「あの店員さん、動揺してたぞ」
「ねー、可愛かったよね」
「そういう意味じゃなくてよ……」
「ふふっ、それにしてもあのお兄さん竜ヶ峰帝人っていうんだ、ゴツい名前」
「いつ聞いたんだ、それ」
「静ちゃん知ってる?個人情報なんてその人の携帯電話さえ弄れればすぐに分かるんだよ、ほら」
「……それ、犯罪じゃねーのか」
「大丈夫、お兄さん本人は気付いてないし」
「あっ、そう」




そんなことより、初デートの場所どこがいいか悩むなー。これは二人で相談して決めなくちゃだよね、帝人さん?













後日
「はい、もしもし」
『もしもーし、帝人さん?』
「……どなたですか?」
『あれ、もしかしてもう俺の声忘れちゃったの?初デートどこ行きたいか聞こうと思ったのに』
「まさか……」
『あっ思い出してくれた?じゃあ今度は俺の顔も思い出してもらわなきゃだね』
「えっ、なにいってるん」

ピンポーン、ピンポンピンポーン

「!?」
『ドア開けてもらってもいい?早くしないと勝手に開けちゃうよ?』
「もしかして……」
「会いに、来ちゃった」
「!!!?」




END

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