2011/01/25 05:22

君の生意気な目、文句ばかりもらす口、鈍い鼻、僕の声を聞いてくれる耳。
嘘つきな君、泣き虫な君、優しい君……大好きな君。
僕らは何故出会ったのか、なんで出会わなければいけなかったのか。
最後はこうして別れてしまうのに、なんで君は僕に会いにきたの。
ねぇ、正チャン。
この胸に溢れ出すこの想いを君に伝えずに、どうやって愛を消化すればいいの。僕はいつ、君の隣で幸せになれるの。


『おやすみ、さよなら、あいしてた。』







タンッと雨が窓を叩く音。
身を寄せれば冷たい窓が、優しく僕を受け止めてくれる。
頭上で響く雨の音、土を湿らせたような雨の匂い。なんて静かな夜なんだろう。僕がまだ彼の部下として日々パソコン画面と睨み合い働いていた頃に、こんなにも穏やかな夜があったかな。たまに彼の粋な計らいで部屋中のお花畑に頭を痛めたり、モニター越しに嫌みったらしく文句をいったり、時々二人でありふれたような会話をしたり。
まぁ、この頃の生活よりはまだましだったかな。何より彼と話しができた。
でも今は……。

「入江君、ちょっといい?」

ふと、扉を叩く音と突然の来訪者。
あんなに頼りない子供だった人が、今じゃこんなにもボスのオーラが似合う男に。成長というのは科学では分析も予想もできないから怖い。
いつもの凛々しい顔とは別に、男は溜め息まじりの憂いの目で僕をみる。たったそれだけの事で男が何をいいたいのかはわかったが、説教ならもうお腹いっぱいだ。男から逃げるように視線をそらし、雨をみる。窓の外を眺めている方がずっと心が落ち着いていい。

「何で、あいつに会いにいってやらないんだ」

驚いた、声が震えている。
男のこんな声を聞くのはいつぶりだろうか。

「……何で綱吉君が泣くんだよ」
「お前が泣かないからだろ!!お前だけじゃない、あいつだってお前に会おうとしない!!お前ら二人して馬鹿だよ!!!!」
「お、落ち着いて、とりあえずグローブしまってよ」

感情が高ぶると物に当たる癖が振り返してしまっている、危険極まりない。
男はきっちりと着ていたスーツのネクタイを引っこ抜き、ジャケットもその場に脱ぎ捨てた。(結構な値段がするはずなのに……)
何で突然脱ぎはじめたのかは僕にはよくわからないが、どうやら男は相当ご立腹らしいことは察した。
こうなった時の男はむきになり、頑固親父並に面倒になるので僕はあんまり好きではないんだけど、生憎今は男をいつも宥めてくれるはずの部下達はいないのでどうしても僕自身で解決しなきゃならないらしい。
腕を組んで仁王立ち、恐ろしい。

「俺はね、入江君」
「……はい」
「会いたいのなら、迷うことなく会いに行けって言ってるだけなんだよ。それとも俺らに遠慮してるの?大丈夫、文句いうような奴がいたら俺が黙らせるから」
「そんなんじゃないよ、別に」
「じゃあ、何で会いに行かないの?」
「僕と彼は会っちゃいけないんだ」
「そんな、入江君は今すぐにでも会いたいって顔してるのに、あいつだってきっと……」
「違う、そういう意味じゃない」
「……?」
「僕ら"最新から"会っちゃいけなかったんだ、ずっとずっと前から、出会っちゃいけなかったんだ」

そう、僕は出会ってはいけない人に出会ってしまったのだ。
だから未来が、世界が変わった。
僕が彼を変えてしまったんだ。

窓の外をみると雨脚さらにひどくなっている。真っ暗な夜の中から聞こえる、雨が窓を叩く音。
タッタッタッ、タッタッタッ。

きっと彼も今、同じ事を考えていることだろう。


『おやすみ、さよなら、あいしてた。』












「それでもやっぱりお前らは、どうしようもない馬鹿だよ」




END

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