2011/01/14 12:27

call me.
僕の名を呼んで。



用意するのは紙コップ二つに糸を一本。
ここで注意しなくてはならないのは、細目の糸を選ぶということ。あまり太い糸(たこ糸とか)だと声の振動が糸に吸収されて、なにも聞こえなくなってしまうから。
用意した材料を繋げてくっつけて、あっという間に糸電話の出来上がり。

「ねぇ、正臣」
「うん?」
「発想が小学生並だよね」

俺が持つ紙コップとは反対側のそれを持ち幼なじみは、心底呆れた感じでため息をもらした。
小学生とは失礼なやつだな。

「世紀の大実験に付き合わせてやってるんだぞ、小学生はないだろ」
「いや、糸電話で実験するのは小学生ぐらいです」

この頃こいつの口の悪さがエスカレートしてきて怖いなあ、一体誰の影響を受けたんだか。変な人に唆されなければいいんだけど。
とにかく実験開始だとあまりやる気のなさ気な相手を離れるように急かす。糸を長めに用意したので、部屋の端と端くらいの距離なら届くだろう。
自分と相手を繋ぐ紙コップと紙コップの間、ピンッと張った糸を軽く引っ張られる感覚が、向こう側の準備が整った合図だ。
とりあえず手始めに相手の名前を呼んでみる。反応がない、実験失敗か?
……いや、ほんの小さな声だけど「正臣、正臣」と幼なじみの声がする。実験は成功だ。

「みーかど君、聞こえてる?」
「だから聞こえてるってば。で、これで実験は成功。もう気が済んだ?」
「えー、もうちょっとこれで遊んでようぜ
「あきた」
「うーん、じゃあ、次の実験」
「次の?」
「あぁ、その名も、糸電話で想いは伝わるのか!実験」
「くだらn」
「実験中はくだらないなんて言葉は厳禁ですー、ほらやるぞ」
「はいはい」
「……」
「え?なに?聞こえない」
「……」
「もっと大きい声でいってよ」
「……だ、ばーか」
「最後の不愉快な言葉しか聞こえないんだけど」
「もういい」
「?」
「ほら、次は帝人の番」
「僕?うーん、えー」
「ほらほら」
「じゃあ、…………」
「え?」
「だから……」

『僕に繋がりをくれて、ありがとう』
『僕と出会ってくれて、ありがとう』
『僕にいろんな人達との繋がりを作ってくれて、ありがとう』

「ありがとう」
「えぇ!?」
「聞こえた?」
「……聞こえた、けど」
「そう、ならいい」


実験結果その一、糸電話で言葉は通じる。
実験結果その二、糸電話で想いは通じる。(ただし個人差がある)
実験結果その三、糸をたぐりよせれば幼なじみの照れた顔をみれる。




call me.
僕の名を呼んで。
call call call.
僕はいつでも、君の声が聞ける場所にいるよ。



END


―――――――――――
神亜さんへの相互記念文です。
今日の夜にMainに移動させて、神亜さん宅にご挨拶に行こう。

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