2011/01/13 02:00

横暴な統率を振りかざす癖に、いまいちリーダーシップにかける。
上から目線で偉そうなことをいうくせに、いまいち言葉に説得力がない。
つまり彼はいまいち統括者向きな人ではないのだ。

しかし、そんなこと……

「青葉さん、聞いてます?」
「んっ……あぁ、聞いてる聞いてる」

僕らがたまり場に使っている古倉庫。
僕より年上の人のはずなのに、僕に敬語で話しかけてくる情けない奴が不愉快なことをいう。いちいち媚びた笑顔が気持ち悪い。

「ならなんであんな奴をリーダーに選んだんすか。あんな、喧嘩もできない天才的に頭がいいわけでもない使えない奴」
「そんなこと」
「?」

青葉さんって、さん付けって。
年下相手にさん付けって、どうしようもなく残念だなこの人。

「あの人が自分自身で一番わかってることだよ。それをアンタが一々口にだすことじゃないと思いますよ?」
「でも、リーダー格なら青葉さんの方がずっと……」
「そんなこと言ってると痛い目に合いますよ、ほら」

ほらと指差したその先、どこからかこの残念な人を呼ぶ声がする。どうやら丁度彼からお呼びだしがあったらしい。地獄耳かつ独自の優秀な情報網を使う彼のことだ、自分を否定する人間を察知することなど簡単なことなのだろう。
残念な上に可哀相な人、これは無事に帰ってこられるだろうか。

「帝人先輩は自分の悪口をいういじめっ子が大嫌いなんです。ひどいことされる前に全身全霊で謝罪するんですね」
「えっ」
「アンタだって手の真ん中に大きな穴なんて作りたくないでしょう?僕みたいに」

相手の顔がみるみる青白くなっていく。自分の両手を握りしめ、やっと自分が発言した言葉の愚かしさを思い知ったのだろう。
そんな彼の後ろで残酷にも、ドラム缶を蹴り飛ばす派手な音が響いた。その苛々とした音が告げていた、「早く来い、僕を待たせるな」と。

「それじゃあ……頑張って?」

両肩をポンポンと叩き、彼の元へと送り出す。最後にとびきり爽やかな笑顔をおまけにつけて。

その人が彼の足元で土下座をして一生懸命なにかを叫んでいるのを見届けた僕は、重々しい空気の古倉庫から夜空輝く外へとでる。
いやいや本当におっかない人だね、僕らのリーダー様は。







横暴な統率を振りかざす癖に、いまいちリーダーシップにかける。
上から目線で偉そうなことをいうくせに、いまいち言葉に説得力がない。
つまり彼はいまいち統括者向きな人ではないのだ。

しかし、そんなこと……彼自身が一番よく理解しているのだ。それを第三者がぐたぐたと、馬鹿だな。
それに彼は、別に統括者になりたいわけではない。自分が上手に利用できるチームを作りたいだけ。


「まぁ、僕には、独裁者にみえなくもないんだけどね」



END

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