2011/01/31 00:49

愛だ勇気だなんだって、元々僕はそういった類の言葉が嫌いなんだ。
現実味がないし信頼もない。
そんな空虚じみたものだけが友達の某炭水化物のヒーローは本当に可哀相だなと思う。

「好きなんです、付き合って下さい」

この言葉には、なんでこんなにも中身がないのか。
もうそれは聞き飽きたんだよ。
本当に空しいなぁ。

「……あの、奥村君?」
「えっ?あぁ、すみません、ちょっと考え事をしていました」
「考え事ってなんでこんな時に」
「こんな時にって、こんな時にしか考えられないからですよ」
「?」
「貴女の告白をどうやってお断りしようかなと思いまして」

相手の顔の表情が崩れ落ちるかのようにみるみる消えてゆく、さっきまであんなに必死に可愛いげな顔を作っていたくせに。
そのギャップに笑えるし、反吐が出るほど気持ちが悪くなる。
このあとの展開はだいたい同じ、目つきが変わって険しい顔になる、「信じられない!最低!」から始まってこのあとは罵声の嵐か泣き落とし。
こういう時の女って、自分が持つ全ての武器を使って相手を遠慮なく攻撃するんだな。ついさっきまで愛の告白をしていた相手だっていうのに。
女って残酷、恐ろしいわ。
だからこっちも全力で反論したくなる、二度と僕のことを「好き」だなんて言えなくなるくらい。

「そもそも全然好みタイプじゃないんです、貴女」
「……は?」
「僕はね、料理をするのが好きで特に家庭料理が上手くて少し馬鹿ででもそんな所が可愛くて放っておけなくて24時間ずっと見守ってあげたくなるような人がいいんです。もっというなら細い体のくせに力持ちで見た目は不良っぽくてでも本当は誰よりも心優しい人でそんな自分を他人に上手く伝えられないくらい不器用。感動屋ですぐ笑ったり泣いたりしちゃって思った事が顔や口に出やすい、自分の感情の揺れを制御できない。家族や友人をちゃんと大切にできるいい人、でも自分自身にはたまに無頓着。正義感と好奇心に溢れかえっていて、そのせいで暴走しちゃうのがたまにキズ。以外と周りの意見に流されやすいところもあるけど、本当に肝心な時はちゃんと自分の意見を突き通す。その時の頑固さといったら天下一。傷付きやすいという弱々しいところもあって、父さんが亡くなって以来は自分の周りの人達が傷付くことにも怖くなってしまっている。度胸は座っているが怖がり、精神的に強い猛者だけど弱虫、我慢強いけど泣き虫という矛盾が当たり前に存在する不思議な人。朝に弱い、たまに寝ぼけてベッドから落ちる。その時目が覚めて驚いたような顔がたまらなく可愛い。そんな……兄さんが僕は好きなんです」

全ていいきってやると相手は微妙な顔をして僕をみる。
怒ったような哀れんだような悲しんだような気味悪がったような、そのすべてを孕んだ顔だった。
それを見ているのは、とても愉快。可笑しくてたまらない。

ふと胸ポケットにいれてあった携帯がふるえ、画面では今一番会いたい人の名が光っている。
どうやら今日の夕飯はオムライスらしい、玉子を買ってこいと指令がおりた。

「玉子もないのにオムライスに決めたの?可愛いな、本当に」
「…………」
「ん?あっ、じゃあ僕はこれで失礼しますね」
「……」

一刻も早く帰宅して、兄さんが作ってくれたオムライスを食べなくては。






「本当に、なんなのあの兄弟」




「…………気持ち悪い」




END

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