2010/12/28 00:57

その日の夜、自分のベットで僕のスクエア(漫画)を読んでいた兄さんが突然「ケーキを買いに行こうと」といい出した。
あまりにも唐突なことだったので「何故!?」としか僕は反応できなかったが、兄さんに無理やり部屋から引っ張りだされ、しばらく彼の背中を眺めながら歩いていた途中でふと思い出した。
あぁ、そうか。
今日は僕らの誕生日だった。





奥村兄弟、HappyBirthday!!







この眠気も吹っ飛ぶ寒さの中近くのコンビニまで歩き、そして今。
コンビニのスイーツコーナーで兄さんは、陳列されているケーキを食い入るように見ている。
どうやら右にあるショートケーキと左にあるチョコレートケーキのどちらを買うのか迷っているみたいだった。
ケーキなんてなんでもいいのに、と僕は思う。
でも、うんうん唸りながら二つのケーキを見比べているその横顔は、悩むということ自体をどうやら楽しんでいるみたいようだった。
ケーキ如きで幸せになれるなんて、兄さんは可愛いなぁ。
彼の双子である自分自身に可愛げなんてものを探してみたが、どうやら自分の中には皆無みたい。むしろ不細工な所しか思いつかいくらいだった。
兄さんが選んだケーキならなんでも美味しいのにという思考がまず、本当に可愛くない。

レジから戻ってきた兄さんのコンビニ袋の中には二つケーキが入っていた。
どうやら僕の分も買ってきてくれたのか、ガサガサ揺れる袋を僕の目の前に突きだし「俺がショートケーキで雪男がチョコレートケーキな」と得意げに言っている。
結局どちらかに決められなかった兄さんの「チョコの方は半分雪男にもらって食べよう」という魂胆は丸見えだったが、兄さんが自分にケーキを買ってくれたということが純粋に嬉しかったので笑って答えてあげた。
「ありがとう」といわれた兄さんも照れを誤魔化すようにくしゃっと笑う。
昔っから兄さんは決まってその笑い方をする、僕はそれがすごく好きだった。
笑い方だけは変わらない、僕らの小さい頃に戻れたような気がするから。




「ねぇ、兄さん」
「んー」
「帰り道はさ、手、つないで帰ろうよ」
「はぁ?何で?」
「いいじゃん、小さい頃はいつもしてたんだし」
「……今日だけな」
「うん」
「お前手温かいなー、手が温かい奴は心も温かいって知ってたか?」
「兄さんそれたぶん逆だよ、手が暖かいと心は冷たいんだよ」
「いやでも、お前は心温かいだろ」
「……」
「今だってこうやって、寒いの我慢してケーキ一緒に買いに来てくれてるだろ」
「それは、真夜中に兄さん一人でで歩かせるのは心配だったしね」
「お前本当にいい奴だな」
「……」
「誕生日おめでとう」
「兄さんもね」
「お前みたいないい奴が弟に生まれてきてくれて、良かったことばっかだ」
「僕は兄さんみたいな兄を持って苦労ばっかりだけどね」
「ちょ、おま」
「でも、兄さんが僕の兄として生まれてきてくれて良かったと思う」
「?」
「大好きな兄さんを、こうやってすぐに独占できるからね」
「ブラコン野郎が、手離せ」
「やだね、部屋つくまでは離さない」
「じゃあ、早く帰ってケーキ食おうぜ」
「えぇ、もうちょっと散歩していこうよ」
「このままじゃケーキ食わないで誕生日終わっちまう」
「じゃ、食べながら帰ろうか」
「……」










奥村兄弟、誕生日おめでとう!

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