ほんの些細な、そんなこと |
ジリジリ。いつもより2時間遅くセットした目覚ましが声をあげた。新たな年を迎えて三日目が始まろうとしていた。
「起きてください黒尾さん〜」
いつもよりもベッドが狭い原因、泊まりに来ていた恋人の枕を引っペがす。もういい加減その寝方やめろよ、と言いかけて、泊まりの荷物と枕を持参してくるコイツの姿が面白いので言わずに放っておく、そんなことをし続けてもう2年が経ったのか。なんて。
「あとごふん…」
「俺はお前の母ちゃんじゃありません、ほらてつろーはやく!」
やっとの思いで起こして寝室からこたつのあるリビングルームへ。生憎?幸いに?家族はみんなして実家へ帰省中。俺だけ部活すぐ始まるからと家に残されている身分なもので。
「あー体なまりそうだなー」
「朝あんだけ起きなかったやつが何言ってんだか!」
こたつにみかんにお茶にテレビのリモコンに、座布団をしいてジャージを着てもこもこの靴下を履いて。いかにも、お正月。って感じの雰囲気が漂う10:30。元旦に初詣と同時に神社の階段をダッシュして、疲れてから何も動いていないから、確かになまってはいるのだけれども。
「ははっ、」
「なんだよもりすけー、そんな朝、俺寝起き悪かったかよー」
うりゃっ、と抱きしめてくるひと回り大きな体。あたたかくて、おおきくて、ふわっと腕をまわされて。
「やめろよーくすぐったいっ、て、ははっ!てつろー!!」
こたつの中で足があたって、蹴りあいになって、もー、ギブ!なんて言ってくすぐりあいっこも終わって。
「しあわせだなぁ、って思ったんだよー」
こうやって、好きな人と元旦を、迎えて、なんでもない時間を一緒に過ごせて、笑いあっていられて。
「今年もしあわせだなぁって!」
俺は思うんだけど、お前はどう思う?
振り返って、寝っ転がったまま正面を向いてそう問うと、鉄郎は俺の頭を撫でてきた。やめろ、猫じゃないんだぞ。
「今までは幸せすぎて、心配っつーか、怖いくらいだったんだけどな、」
笑いながら、はにかみながら、俺の髪をくるくるする。やめろ、その表情、ずるいぞ。
「今は幸せすぎて、しあわせ」
神様に感謝しねーとな、なんて顔に似合わないことを言い出したから。そうやって肝心な時にいつもかっこいいのは、ずるいぞ。
「ほんっと、お前ずるい…」
どちらからともなく、距離が狭まっていって、唇をつける。こんな砂糖菓子のような甘ったるい行為を年中やっているなんて、恥ずかしい。それでも、しあわせなんだ。
今年もまた、あなたとしあわせな年になりますように。テレビからは笑い声が溢れていて、窓からはやわらかに日差しが差し込んでいた。
ほんの些細な、そんなこと
(そんな単純なことでしあわせになっちゃうんです。あなたとなら。)
ハッピー黒夜久の日!
にしても半年ぶりの文章 つっこみどろ満載!
これからも黒夜久末永くお幸せに。
20140103 利歩