プロローグ・エピソード |
「おー・・・」
あったかいんだか寒いんだかわからないこの中途半端な季節はなんだかんだ言って一番好きな季節だ。
高1の過程も終了し、バレーに明け暮れていた春休みも終了。バレー部の新2年は3人しかいないから昨年もクラスはバラバラだった。今年もどうせバラバラだろうから期待はしない。昨年みたいにうるさくて楽しいクラスになれれば面白いからいいな〜なんて思いながら張り紙を見る。
決して背の高いほうではないので苦労しつつも名前を探す。4組で海の名前を見つけて5組で黒尾の名前を見つける。こいつらクラス近くてうらやましいなぁ。そんなことを思っていると自分の名前を見つけた。5組。え?やった?黒尾と同じクラス?
(よっしゃ・・・!)
小さく小さくガッツポーズをする。バレてしまわないように。あれ、でもこれから同じクラスで、隠せるのかな・・・。少しだけ不安を覚えつつもやはり楽しみで仕方ない。そう浮かれていると少し向こうに黒尾の姿が。なんかそこで立ち尽くしている。
「おー黒尾!やったな同じクラス!」
浮かれていたから少し声のテンションが高くなる。別に普通に友人と同じクラスになって嬉しい、そうとも捉えられるだろう。大丈夫。
「そうだな、よろしく・・・」
なんとなく、緊張した雰囲気で挨拶をされる。なんか俺悪いことしたっけ?・・・正直心当たりが多すぎる。今年無事入学してくる黒尾の幼なじみ。その幼なじみの話をしてくる黒尾のこと本当お父さんみたい、とかどんだけ幼なじみ大好きなんだよ、とか。少し妬いた気持ちを抑え隠すためにいろいろ言ってたからそれでちょっと怒ったかも。あとはそうゆう目で黒尾のこと見始めてから、まぁ春休みくらい?からなんでだよ!とか突っ込むときも前よりもおとなしくツッコミをいれたりしてたから。後者が少しでもバレてたらかなりヤバい。俺がヤバい。
「教室どこになるんだろー、なぁ?」
恥ずかしさとかどうしよう、とかそんな気持ちを吹き飛ばすために話題を作る。
「北棟が良いよな、体育館近いし」
バレーしか考えてません、みたいなそんな横顔を見上げる。そんなところに惚れたんだ。バレーをしている姿、バレーが大好きな姿。俺も同じくバレーが大好きなので別にそんな恋人になりたい、とかそんなことは望まない。今のこの関係が大好きだ。
「たしかに!」
少しくらい触れ合って、少しくらい他の人とはやらないこと、2人で遊び行くとか。少しでも多く同じ時間を過ごすとか。そんなことができたらそれだけでいい。
これから先、きっと誰よりも多く黒尾と同じ時間を過ごせるのだろう。あ、でも幼なじみくんには負けるかも。でもその幼なじみも後輩になるんだ。高校初の後輩。昔から後輩にはかなり甘いから、もう、嫉妬とかそんなことよりも可愛がりたい。楽しみだ。
新しい季節は楽しみが多い。嫌な先輩もいなくなって、海ともクラス近くて、新しい後輩ができて、そしてそして黒尾と同じクラスで。足取りが軽い。20センチ違いの黒尾の歩幅にだってついて行ける。たまにこっちを見る横顔にちょっとだけドキッとして。上から降ってくる優しげな声に楽しくなつて。高校生活2年目。今までで一番楽しい時間がスタートした。
見上げた校舎はいつもより少し輝いているような気がした。
プロローグ・エピソード
(この感情が初恋へと変わりだす)
なんか黒夜久は夜久さんの片思いな小説が多い気がするのですが私はどちらかというとクロさんが片思いしてて悩んで悩んで・・・なのが好きです!黒夜久はお互い初恋でどうしたらいいかわからなくなってるといいと思います・・・