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見えないキス




ぷつり。

部屋を照らす朱りが消えて、二人だけの世界となった。

「おい、」

「・・・・・」

「ジュダル、」

泣きたい。そう言ったらシンドバットは、涙は見せないで泣けって言ったから。確かに泣き顔は見られたくなかったし。

「・・・・うっ、・・・」

情けない。いつもこのときの自分は惨めで情けないと思う。

「大丈夫だ、」

シンドバットはしっかりと俺を支えてくれる。苦しいくらいに抱きしめてくれる。俺はこの瞬間が1番、あぁシンドバットに愛されてるなって感じる。

「いっぱい、いっぱい泣いていいからさ、」

王様は絶対にキスをしない。抱きしめて、囁いて、優しい言葉をかけて、手を繋いでくれるだけ。少し、ほんの少しだけ寂しい気もしたけど我が儘言ってられない。何より俺は王様のことが好きで、それで王様が俺に構ってくれるならそれだけでもう幸せじゃないかって思うから。

「・・・俺、つぎはっ!もっと、頑張るから・・・・」

暗い部屋に声が、泣きじゃくる声が響く。優しく背中を叩く音が耳に聴こえてシンドバットは優しいなって改めて思った。

「・・・・あぁ。・・・・・・」

目の前の視界が余計に暗くなる。真っ暗な部屋だったから感触だけしかわからなかった。

「・・・・シンドバット・・・・?」

何も言わない王様は俺の肩に顎をのせて「大丈夫だから」と言ってまた背中を軽く叩いてくれた。

「・・・・ありがと、」

そうお礼を言った俺の唇にはまだ、先程の柔らかい感触と熱さが残っていた。



見えないキス
(それは優しい味つけ)


最初はシンジャよりシンジュ派でした。
20130301 加筆

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