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世界にたった二人




一面に緑が生い茂っている。見渡す限りの、広大な草原。
広い広いこの世界。たくさんの人がそれぞれの暮らしをして、それぞれ好きなことをやって。それぞれ愛する人を見つけて、それぞれ絆を育んでいる。

「なんで、君だったんだろうね、」

「あぁ?」

なんだよお前。俺じゃ不満か。
なんて自信あり気に言うから、面白くって。

「そういうわけじゃないよ。ただ、僕たち敵なのにさ、」

自分で言っておいてなんだけど、敵という単語に心が痛む。本当は敵になんてなりたくないのに。本当はもっともっと自由に、君とたくさん遊んで、いろいろな所を、世界の果てまで見に行きたいのに。

「たしかに、・・・な、」

彼が、敵ということを認めた。心のどこかできっとジュダルくんなら敵だなんて、そんな小さなことを拒否してくれる、とか甘えていたから。だからちょっとだけ驚いて、なんだか悲しくなった。

「うん、」

空が青い。雲が静かに動いていて、太陽は草原の緑を美しく照らしていた。

どうして君だったんだろう。どうして僕はこんなにも君に焦がれてしまったのだろう。そんなことばかり考えてしまって、考えても答えなんてでるわけないのに、理由なんてあるわけないのに。胸を締め付けられるような、心臓がうるさくなるようなこんな気持ちばかり積もっていく。

「・・・でもな、」

積もる気持ちと締め付けられる心臓で、不安になっていたときに上から優しい、彼とは思えない優しい声が降ってきた。

「何年後でも、生まれ変わったあとでも、俺はお前だけ、だと思うぜ?・・・」

ぽん、と頭を撫でられる。バルバットで会った時の攻撃からは予想もできないような、あたたかい掌で、風が頬を撫でるように。

「なんだいそれ、」

頬が緩みそうだ。いつもこんなこと言わないジュダルくんが優しいこと言ってくれるなんて。不安な気持ちなんか、吹っ飛んだ。風と一緒にどこかへ行ってしまった。残ったのは、太陽みたいなあたたかくてほっこりする、柔らかい気持ちだけ。

「笑うなよ、チビ!」

彼の長い黒髪が風と踊った。優しく優しく、踊った。

「僕だって、ジュダルくんだけだよ、」

そう。いつだって。例えこんなにも対称的でも僕は君に、焦がれるんだ。マギというこの使命を抜きにしたって、きっと生まれ変わったって、僕らが生まれる前だって、きっと。

すっ、と腰をあげる。自分の足でしっかりと、生きていることへの感謝と君との絆を、こんなにも焦がれて仕方ないんだ、なんて気持ちは隠して、地を踏みしめる。彼が、おっ、立ったのか?なんて顔でこちらを見ている。何十センチも高い彼の目を見つめて、言った。

「僕は、君に惹かれているんだよ、」

いつだって、今だって。


世界にたった二人
(なんて、ロマンチックな、)

一周年ありがとうございました!
イメージはもしも、の話をする二人なのですが、なんか違う。
タイトルは確かに恋だったさまより。

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