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手をつないで走ろう




「うわぁ、冷たいねぇ、」

雪が少しずつ溶けてきた今日の日に俺たちは海岸まで遊びに来ていた。
夜は氷点下まで下がってしまう気温もまだそこまで寒くはない。けれども水遊びは厳しいんじゃないだろうか。

「アラジン、あんま入っと風邪引くぞ!」

「うんっ!」

大丈夫だよ。そんな言葉が返ってくる。
桜散る春も夏の暑い日も紅葉綺麗な秋も空気の澄んだ冬も。いつだってそばにあったその純粋な笑顔でアラジンは微笑んだ。昔、母さんが俺に何かを教えてくれたときような、マリアムと遊んだときにマリアムがふと見せたようなそんな笑顔で。

「わっ、アリババくん?」

ずっとずっと、離れないでいてほしい。近くにいてほしい。俺を支えてほしい、守りたい。溢れんばかりの想いをこめて俺よりも小さな小さな手を握った。

「俺も、入ろっかな!」

洋服の裾を捲り上げて、足首をさらす。冬の冷たい空気が少し痛かったけれどもそんなことは気にしない。

「わぁい!アリババくん!向こうまで行こうよ!」

そう言ってきゅっと手を握り返される。砂浜と海が面する静かな場所を、ぱちゃぱちゃと音をたたせながら歩いていた。

「よし、どこまでいけるか競争しようぜ!」

童心に戻ったように思いっきり走りたくなった。この世界の汚いことを、大切な人を亡くした悲しいことを。一旦忘れたくなって、思いっきり走りたくなった。

「うん!よし、行くよ!」

握りあった手は離さずに。アラジンの歩幅に合わせて、一歩ずつ進む。
いつまでも、どこまでもお前と一緒に走っていこうかな。そんなことを考えながら。



手をつないで走ろう
(冷たい手でもいいよ、)


一周年ありがとうございました!
cpってよりはきゃっきゃしてる、みたいな。
タイトルは確かに恋だったさまより。



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