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懐かしいキスをする



昨日の夜、ちらちらと雪が降り始めたと思ったら今朝はもう一面雪景色になっていた。どうりで寒いわけだ。ベッドから体を起こすと、隣では恋人がすやすやと夢の中にいる。いつもはクーフィーヤに隠されてあまり見ることのない銀髪が、枕元にするりと落ちた。

「おはよ、」

朝、4時前。もちろん街の灯りはまだまだついていない。起きるはずのないその名を呼んでそっと布団をかけ直した。
俺が若かったときはいつもこうやって同じ布団で寝かせたな、なんて昔のことを思い出す。幼かったジーファルを無理矢理布団に入らせて、やだやだ行くなと喚くのをおさえて会議へ出るために部屋をあとにしたこともあった。
・・・寂しい思いをさせてしまったな、と今になって思う。まだ9歳10歳の子供を一人、広いこの部屋に置き去りにして俺は行ってしまった。泣きじゃくる声を聞きながら聞いてないふりをして部屋のドアを閉めてしまった。
会議から帰ってくると、ベッドに座り込んだまま寝るもんか、と必死に目を開いていた、まぁうつらで半分は寝ているのだが、ジーファルは必ず寝転がらずに座っていた。

「まだ、寝てないのか」

そう声を発すると驚いたようにハッとこちらを見て、頬を膨らましていた。

「終わったのかよ、」

膨れっ面でそう訪ねてくる。

「ちょうど今、な」

子供一人では広すぎるベッドに入って、そのままジーファルを寝かせる。肩まで布団をかけて、自分も布団に入って寝る体制になる。こうやって二人、布団に入るとジーファルは必ず俺の手をとろうと、必死にてをのばしてきた。だからその手をしっかりととって。額に静かに唇を、落として呟くんだ。

「おやすみ、良い夢を」

そう言うと安心したようににこりと笑っておやすみ、と言われた。


そんなやりとりを繰り返すこと早十数年。さすがに手をとって寝ることはないけれども。こうしてたまに同じで寝たりキスをしたり、するときがある。幸せだな。と、ふと思った。世界はこう、戦争で溢れているにも関わらず、愛する人と朝日を見ることができるのが、同じ布団で寝ることができるのが、手を取り合って笑いあうことができるのが。改めて、いま、生きていることの有り難さを実感する。本当に俺は幸せ者だ。

「っん、」

小さく声を上げて、ジーファルが起きた。まだ寝ぼけ眼でこちらを見ている。

「おはようございます、シン」

ふにゃり、と。あのときと変わらない笑顔で笑う。その表情を見て、やはり俺は幸せだな、と思った。
ベッドに近づいて、少しはねた銀髪に触れた。やわらかい。

「おはよう。」

昔懐かしい、額に落とすキスをする。あなたと過ごせる今日一日にあらんばかりの感謝を込めて。幸せな幸せな世界に感謝を込めて。


懐かしいキスをする
(この熱は消えぬままで)

一周年ありがとうございました!
時間系軸がよくわからんシンジャです。若シン子ジャが好きです・・・!甘々にしようとしたらおかしくなった・・・
タイトルは確かに恋だったさまより




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